識者の間では、滑空爆弾を阻止する唯一の方法は、いわゆる「レフト・オブ・ローンチ」、つまり発射される前の段階でつぶすことだという意見が多い。具体的には、ウクライナ軍の防空能力を向上させるかF-16戦闘機などの戦闘機を増やすかして、滑空爆弾の射程である65kmより遠くにロシア軍の発射母機を押し出すというのがひとつの手になる。
さらに進んで、米国のシンクタンク、ランド研究所が昨年6月の報告書で言及しているように、航空基地に駐機中の発射母機をたたくのが最善の策だとする見解もある。これには米国製のATACMS弾道ミサイルのような長射程兵器が必要になるが、米国はこうした兵器をウクライナに供与したり、ロシア領内の目標に対する使用を認めたりするのに消極的だった。
手がかりになる2つの先例
それでも、滑空爆弾の撃墜は諦められたわけではなかった。偶然にも、北大西洋条約機構(NATO)の変革連合軍(ACT)がこのほど始めた最新の「イノベーション・チャレンジ」のテーマも「滑空爆弾への対抗」となっている。チャレンジの対象には探知段階も含まれ、滑空爆弾の誘導システムのジャミング(電波妨害)、射程圏内への発射母機の侵入阻止、滑空爆弾の空中撃破などのさまざまな解決策を公募している。イノベーション・チャレンジはその名のごとくイノベーション(技術革新)、とりわけAI(人工知能)や機械学習の活用でのイノベーションを求めており、大規模に配備でき、そこまで多くの訓練を必要としない、運搬可能で低コストのシステムを募っている。ウクライナはすでに解決策を見いだしたのだろうか。見いだしたとすれば、それはどんなものなのか?
手がかりになるかもしれないのは、同じように従来の防空システムが相手にするには小さすぎ、多すぎる2つの新たな空中脅威に、ウクライナがどう対処しているかだ。2つの脅威とは、ロシア軍の偵察ドローンとシャヘド型攻撃ドローンである。