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イタリアとドイツの日本人女性から学ぶ、「文化の見せ方」の匙加減

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「修理する品物の背後にあるストーリーは極力うかがわないようにしています。ものによっては悲しい背景がある場合もありますし、品物自体が放つオーラのようなもので十分。それは壁画の修復でも同じで、その建造物の歴史的価値や社会性を気にしすぎると、プレッシャーで作業に集中できなくなることもあり、作業をはじめると素材や損傷の状態しか見ていません」

「常に間口は広く開けておきたい」という彼女が、精力的に行うもうひとつの活動がワークショップです。

Photo: Florian Reischauer

Photo: Florian Reischauer

修理の依頼と同じくらい、金継ぎを体験したいという需要があり、それに応える形で始めたワークショップは、日程を公表するとすぐに完売するほどの人気。もともと金継ぎに興味のある人が多いことや、参加を成人のみに限定していることもあり、ワークショップには心地よい緊張感と、瞑想のような雰囲気があるといいます。

天然素材の漆は、硬化すれば口に入れても安心という安全性や、生物が分解できるという循環性もあって注目されています。しかし、漆は一本の木から約200mlしか採取することができない貴重な樹液。また、一度採取するとその木は朽ちてしまうため、新しく育つ木から漆をとれるまでには数十年かかります。ワークショップでは、技術だけでなく、そうした背景も伝えることが重要だと考えています。

バランスのよい「文化の見せ方」

壁画の修復も金継ぎも、体が許すまで続けていきたいと話す豊田さん。彼女と話しているだけで、元気や勇気をもらいます。

想像ですが、KonMIDOをリピートする方も、移川さんに勇気をもらい、生きることを実感しているのではないかと思います。2人に共通している日本文化を発信する”バランス感覚”は、「身体を使う」というクラフト的な活動に基づく気がしています。「なぜ今、クラフトへの注目と評価が高まっているのか?」にも通じるポイントです。

ラグジュアリーにおける「日本文化の見せ方」は、発信者が日本出身だというだけで事足りるのかもしれないと思い始めています。求められれば答えるスタンスで、無理に融合しよう、教育しようとせず、ましてや文化を代表しようなんて背負わない。豊田さんの言葉を借りれば、その人の放つ”オーラ”で十分で、感じ方や関わり方は相手に任せ、間口だけを広くしておく。それがバランスの良い「文化の見せ方」ではないでしょうか。

文=安西洋之(前半)・前澤知美(後半)

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ポストラグジュアリー -360度の風景-

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