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イタリアとドイツの日本人女性から学ぶ、「文化の見せ方」の匙加減

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はじめの頃の投稿は、フェイスマッサージだけにフォーカスしています。時間が経つに従い、スタジオでの写真に日本の置物が写り込み、移川さんが日本で訪れた場所などがトピックとして登場するようになります。彼女の顧客は9割が口コミのようですが、その時に日本らしさが魅力に見えると申し込みに繋がりやすいのでしょう。

実際、移川さんによれば「3分の2くらいの人は、日本に行ったことがあるか、これから旅したいと思っている人」です。KonMIDOはこれまでの経験に基づいたテクニックを統合しているものですが、「最大の目的はウエルネスであり、それを追求することにより、結果として顔に美が表れてくる」という彼女の考え方が評判となって、いわば「ご指名」のようにKonMIDOにたどり着くのです。

ローカリゼーションは必須?

「(移川)ミドリの日本」が信頼され、評価されている。ただ、だからといって移川さんは和装姿でインスタに投稿しません。ぼくは、このセンスが良いのだと思いました。

日本滞在中もインスタ構想を練る

日本滞在中もインスタ構想を練る

移川さんはマッサージを施す前に、ロジカルに1時間ほど手法について説明します。そこで自然と日本の文化にも触れますが、説明できないところは相手の解釈に任せます。説明できない部分を日本文化の錦をまとって一気に攻め立てようとしない。イタリアで長くファッションビジネスに関わり、商品を売ってきた人ならではの匙加減の良さです。

ぼくはローカリゼーション戦略に長く関わってきましたが、移川さんの事例はローカリゼーションであるようでいてそうではない、と思いました。およそローカリゼーションは文化を分析的に解読することにウエイトがおかれます。下手するとステレオタイプの融合になります。それゆえ往々にしてローカライズされたものは面白みに欠けると言われることがあります。

現在、冒頭のような日本文化に追い風が吹くなか、「ローカライズが必須ではなく、日本のそのままを外に出した方が受ける時代になってきた」という声が出ています。しかし、それは外国人に「発見された」場合です。その場合は理解の手がかりがなくて良いだけでなく、その方が受け手は嬉しいのです。発信者がすべきなのは「発見されやすい」条件をセットすることです。

これまでローカリゼーションをできるだけ避けようとしてきたラグジュアリー領域の潮流と似ています。ラグジュアリー分野で仕事をしてきた移川さんは発見される術を心得ているからこそ、インスタの「日本文化露出度」が程よいのではないか? 前澤さんも、異文化理解には関心が深く、日本文化の見せ方についていろいろと思うところがあるでしょう。如何ですか?
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文=安西洋之(前半)・前澤知美(後半)

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