一方、ペンギンの種のなかには、新しいパートナー探しにかなり熱心なものもいる。とりわけオウサマペンギンやコウテイペンギンは、1羽の相手に縛られないことで知られており、繁殖期のたびにパートナーを乗り換える確率が80%を超える。
これらの種では、繁殖地への到着のタイミングが雌雄でずれることや、配偶相手の候補が多数いることから、つがいの相手に忠実に振る舞うことが有利にならないのだろう。
コガタペンギンの特異な点は、二段構えの戦略をとることだ。普段はそこそこに忠実だが、必要に応じてパートナーを乗り換える柔軟性をもっている。このような順応性は、変動の大きい環境では個体に恩恵をもたらすかもしれないが、コロニー全体としては、大規模な撹乱に脆弱になる。
オウサマペンギンのような種では、集団の存続が、繁殖サイクルの同期にあまり依存しないため、頻繁な離婚が、全体としての繁殖成功に与える影響は小さい。しかしコガタペンギンの場合は、1羽1羽のヒナが重要なのだ。

離婚率の上昇から、ペンギンについて、そして人間について学べること
コガタペンギンにおける離婚の研究は、単なる行動生態学の風変わりな豆知識ではなく、社会動態と環境ストレス要因の複雑な相互作用について考察する糸口だ。ペンギンの離婚率の上昇は、どんなにロマンティックに理想化された動物であっても、生きるために柔軟に行動を調整していることを思い出させてくれる。種の保全という観点からは、離婚率の変動を記録することが、コロニーの健全性を評価する重要な非侵襲的な方法になる可能性がある。高い離婚率は、食料不足や気候変動、生息地の撹乱といった潜在的ストレス要因を示すものかもしれない。こうした要因に対処することで、ペンギンの個体数を安定させ、長期的な生存確率を高めることができるだろう。
手乗りサイズのペンギンを擬人化して愛憎劇を想像したくなる気持ちは理解できるが、彼らの離婚の本質は、愛情の喪失というより、繁殖機会の獲得にある。そこから学ぶことがあるとしたら、自然界におけるカップルの関係性は、人間界と同じように、第一印象よりもずっと複雑ということだ。
(forbes.com 原文)