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サイエンス

2025.02.15 17:00

ペンギンも「離婚」する、その生物学的理由と人類が学べること

頻繁に離婚を繰り返すコガタペンギン(Dzung Vu / Shutterstock.com)

離婚した個体は幸せになれても、コロニーはそうはいかない

コガタペンギンは、新たなつがいの形成により、個体としては恩恵を得るものの、つがいの破局はコロニーへのコストを伴う。離婚はしばしば、繁殖シーズンの開始の遅れにつながるのだ。

離婚したばかりのペンギンは、パートナー探しと、念入りな求愛儀式に余分な時間をかけなくてはならない。このようにスケジュールが押すために、子育てに費やせる時間が短くなる結果、全体としての繁殖効率は低下する。

たとえ新たにつがいの絆を確立できたとしても、新たなパートナーに不慣れなせいで、行動協調に問題が生じることもある。巣の防衛のシフト交代がうまく調整できなかったり、つがいの経験不足のせいで、子育てに支障が出たりするのだ。

フィリップ島では、数年にわたって高い離婚率が続いたあとには、一貫して繁殖成功の低下が見られた。

孵化数が減少し、巣立ちヒナの数も減少したことで、コロニー全体の個体数増加が停滞した。研究チームは「離婚率と、コロニーに所属する総個体数の相関関係」は、海水の表面温度や、利用可能な餌の量といった環境要因と総個体数の関係よりも強かったと指摘した。この発見は予想外のもので、社会動態が、コロニーの健全性に重大な影響を与えることを物語る。

さらに問題をややこしくするのが、大量の離婚によるドミノ効果だ。多数のペンギンが同時につがいの乗り換えに熱中しだすと、敵対行動が増加し、もめごとにエネルギーが費やされ、全体的な生産性は急降下する。この意味で、離婚率の上昇は、コロニーの繊細な社会構造を不安定化させるのだ。

ペンギンの離婚率は種によって大きく異なる

興味深いことに、コガタペンギンの比較的高い離婚率は、すべての種のペンギンに普遍的な現象ではない。例えばジェンツーペンギン、キガシラペンギン、マゼランペンギンは、いずれも配偶相手に忠実で、毎年同じ相手とつがいになる確率は80%を超える。

これらの種が驚くほど一途なのは、彼らが採用する繁殖戦略が、長期的パートナーシップが有利になる性格のものであるためかもしれない。例えば、子育てにおけるつがいの協調や、巣づくりの手順への慣れが有利になる、といったものだ。

8割の確率で毎年同じ相手とつがいになるマゼランペンギン(Shutterstock.com)

8割の確率で毎年同じ相手とつがいになるマゼランペンギン(Shutterstock.com)

次ページ > コガタペンギンにおける離婚の研究は、社会動態と環境ストレス要因の複雑な相互作用について考察する糸口となる

翻訳=的場知之/ガリレオ

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