危機感が高まる中、頼もしいことにグーグルは25億人ものGmailユーザーを守るために大幅なアップグレードを行い、攻撃者へのハードルを一段と上げようとしている。サーバー側のスパムやマルウェア対策は従来どおりだが、今年中には「shielded email addresses(保護されたメールアドレス)」といった革新的な機能を導入し、脅威の根源を断つ計画も進めている。
しかし問題は明白だ。メール自体が時代遅れの仕組みであり、この10年ほど本質的に変わっていない。イノベーションや破壊的変革はどこにあるのか。現実には「受信箱」は依然として世界中の誰にでも開放されている。グーグルがスパムやフィッシングの「99.9%以上」をブロックしているとしても、依然として深刻な脅威であることに変わりはない。
実際、「Apple Support(アップルサポート)」や「X verification(X認証)」などを装った悪意あるメールがいまだに届いてしまう。AIを活用した新種の脅威が今後増えれば、状況はいっそう悪化するだろう。
メールは根本的に再考すべき段階にある。Microsoft MailやLotus Notesの焼き直しのような形ではなく、むしろセキュアなメッセージングシステムのように、受信者が同意した相手だけとやりとりできる仕組みや強力なフィルタリングが必要だ。20年近く前の動画を見ても、メールの基本構造がほとんど変わっていないことがわかる。
イーロン・マスクがGmailの破壊的代替手段としてX-Mailを検討するかもしれないと示唆した背景にも、この問題意識がある。SlackやTeams、あるいはスマートフォンのメッセージングアプリを選ぶ人が増えている理由は、スパムが少なく、インターフェースが短く簡潔で、現代の仕事やコミュニケーションに適しているからだ。興味のない多数の相手をCCに入れる文化も、もはや時代遅れと言える。