現実的に、その担い手はグーグルかアップルだろう。新しいGmail(あるいはメール)アプリでも、より汎用的な「System SafetyCore」型のアプリでも構わないが、とにかく新しいアプリが必要だ。いったん変化が始まれば、ほかの企業も追随せざるを得ない。スマートフォン向けには今年中にも端末側AI防御の何らかの形が導入され、即時かつプライベートな防御を実現し、現在の仕組みを突破してくるメールをようやく一掃できることを期待したい。
残念ながら、Gmailへの攻撃はこれまで以上に巧妙化しており、サーバー側アプローチが根本的に変わる気配はまだない。端末側AIに関しても、アップルのiOS 18のメールアップグレードは期待を大きく下回っており、前途は遠いと言わざるを得ない。
メールを抜本的に変える話が出るたび、プラットフォームが段階的に積み上げてきた改良点を挙げて現行路線を擁護する声は絶えない。だが、ここ数年で他のコミュニケーション手段が大きく変化したのに対し、メールはほとんど変わっていないのは奇妙なことだ。メールにも、同じように破壊的なアプローチが必要とされている。
グーグルはフィルタリングやサーバー側AI、送信者検証を強化し、Gmailのセキュリティを高めてきたものの、あくまで段階的な改善にとどまっている。完全管理型のクラウドメールプラットフォームが当たり前となる中で、「根本的に見直す」という動きはまだ実現していない。現在のような即時性の高い世界や、脅威が急速に変化する状況を踏まえれば、仮に今「ガレージでメールを発明」するとしたら、段階的改善をも含む現在の姿に似た仕組みなど到底考えつかないだろう。
メールには「形式的な作法にのっとり、監査が容易で、誰でもアクセスできるという強みがある」という反論はあるが、それは業界が一歩ずつ変えたいだけの言い訳にすぎないと感じる。もし既存のプレイヤーが大胆な変革を起こせないなら、いずれ誰かがやることになる。
X-Mailの話題が浮上した際、大きな関心が寄せられたのも、その予兆だろう。実際に実現するかは別としても、いずれ何らかの形で同様のアプローチが登場するはずだ。今こそ、メールの大幅な再検討を加速させるべきだと考えている。
(forbes.com 原文)