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欧州

2025.02.12 10:00

英首相が原子力への回帰を宣言、小型モジュール炉の開発に関心

英南西部サマセット州で建設中のヒンクリーポイントC原子力発電所。2022年5月5日撮影(Finnbarr Webster/Getty Images)

英南西部サマセット州で建設中のヒンクリーポイントC原子力発電所。2022年5月5日撮影(Finnbarr Webster/Getty Images)

英国のキア・スターマー首相は6日、イングランドとウェールズでの新規原子炉の建設に向け、非効率な手続きを大幅に削減すると誓った

同首相は「この国はここ数十年にわたって原子力発電所を建設していない。われわれは失望し、取り残された」と述べた。その上で、原子炉の建設を容易にするため、政府が国家計画の「古めかしい規則を破棄する」ことを約束し、全国各地に新たな原子力発電所の建設予定地を設ける計画だと説明した。

スターマー首相は、英国のエネルギー安全保障は長年にわたってロシアのウラジーミル・プーチン大統領の手玉に取られており、同大統領の思いのままにエネルギー価格が高騰していると指摘。「私はこれに終止符を打つ。この国の建設業者を支援するために規則を変更し、あまりにも長い間、手頃な価格のエネルギーや経済成長、雇用の機会を阻んできた妨害者にノーと言うのだ」と宣言した。

英政府は小型モジュール炉(SMR)と呼ばれる、小型で建設が容易な原子炉への道を開こうとしている。SMRは二酸化炭素排出量を削減しながら十分な発電量を確保する手段として、政府関係者や投資家らの注目を集めている。SMRは部材をあらかじめ工場で製造し、現場で組み立てるプレハブ工法で建設することができるため、従来の原子炉に比べて資本費用が少なく工期も短い。

英国では現在、南西部サマセット州にあるヒンクリーポイントC原子力発電所のみが建設中で、これ以外に8カ所の原子力発電所建設予定地が承認されている。政府は現在、SMRの開発業者に対し、より多くの用地を承認申請に出すよう働きかけている。建設計画をコスト効率良く迅速に進めるため、原子力規制作業部会が設置される予定だ。

ヒンクリーポイントC原子力発電所の建設は、フランス電力公社EDFが進めているが、作業は当初の予定より数年遅れており、予算も数十億ポンド(約数千億円)超過している。同社は英政府と共同で英南東部サフォーク州のサイズウェル原子力発電所の開発にも取り組んでいるが、この計画にかかる費用は承認された2020年当時から倍増していると報じられている。フランスの監査当局は先月、EDFは現行の原子力発電所の建設を完了しない限り、国内でも英国でも新規案件を受注すべきではないと指摘した。

大英原子力(GBN)は、SMR開発を主導する英国の政府機関だ。GBNは現在、英国のSMR計画の最終候補に残った4社と契約を巡る交渉の段階にあるが、受注する企業がいつ発表されるのかは明らかになっていない。最終候補に残っているのは、英航空機エンジン大手のロールスロイス、日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の原子力合弁会社である米GE日立ニュークリア・エナジー、米エネルギー技術大手のホルテック、米原子力発電大手のウエスチングハウスの4社だ。この公募は、衰退しつつある国内の原子力産業の復活を目指す英政府の計画の一環として、2023年に開始された。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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