これらを実現するのは、決して容易なことではない。だが、いずれのサブブランドの創設も、ブランドの価値観に基づいた自然な進化の結果と考えることができる。
ハーバード・ビジネス・レビューに掲載されたある調査結果によれば、ブランド拡張の成功には、親ブランドのアイデンティティとの深い結びつきが欠かせない。確かに、アルマーニの飲食業や不動産、スキンケアなどの分野への進出は、この原則を体現し、ブランドの機能をさらに高め、レレバンスの維持を確実なものにしている。
時代を超越するブランドにとって、思慮深い拡張はその中核的価値を増強させるものだ。アルマーニの「帝国」が例証するのは、規律のある多角化が、いかにそのレガシーを守りつつ、新たなレレバンスを生み出すかということだ。
3. 「クラシック」は停滞を意味しない
アルマーニは、クラシックであることが必ずしも「停滞」を意味するものではないことを証明している。ブランド創設50周年とマディソン・アベニューの複合ビルの開業を記念して、アルマーニは24年10月、文化的レレバンスの世界的中心地であるニューヨークで、2025年春夏ウィメンズ・コレクションのショーを開催した。アルマーニの世界を体現するこの複合ビルには、アルマーニ プリヴェやアルマーニ カーザをはじめとする小売店とレストランが入るほか、上階は高級コンドミニアムとなっている。
没入型のブランド体験を求める現代の消費者のニーズを反映し、アルマーニ ビューティー サービスなどの革新的なサービスも提供しており、時代を超越するエレガンスと現代的な利便性をシームレスに取り入れたものとなっている。
ブランドの革新性はブランド・ロイヤルティに前向きな影響を及ぼし、知覚品質(消費者が認識する品質)は、顧客とブランドの関係において媒介的役割を果たす。そのことは、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・マーケティングに発表された論文でも指摘されている。
コンセプトストアであるマディソン・アベニューの複合ビルは、こうしたバランスを明示するものだ。そのDNAに忠実でありつつ、伝統と革新を巧みに融合させ、ブランドを進化させている。
