Power Research Groupのアナリストを務めるヒュー・ウィンも、この見方に同意する。「AIモデルの訓練と運用に必要な電力は、大幅に削減される可能性がある。しかし、これらの効率向上がAIのコストを引き下げることにつながれば、AIサービスの普及は一気に加速し、想定されていた省エネルギー効果を打ち消す可能性が高い」と彼は述べている。
East Daleyのクラウスは、米国で急増する最先端のデータセンターに対する需要を満たすために、2030年までに、テキサス州全体の電力需要に匹敵する81ギガワットの電力が追加で必要になると予測している。仮にこれらの需要をすべて天然ガス発電で満たすとすれば、米国における天然ガス供給量の約10%に相当する1日あたり約129億立方フィートのガスが必要になる。
「メタのプロジェクトは、天然ガス市場への影響という観点で特に注目されている」とクラウスは語る。彼の試算によると、シュクレのデータセンターは単体で1日あたり3億6000万立方フィートの天然ガスを消費することになるという。
相次ぐAI関連の大型プロジェクト
しかも、AI向けのデータセンターには、シュクレよりも規模が大きなプロジェクトが複数存在する。OpenAIはオラクルやソフトバンク、マイクロソフトなどと提携し、5000億ドル(約76兆円)規模のデータセンター計画、「スターゲート」に取り組んでいる。このプロジェクトは、最終的に5ギガワット以上の電力を必要とする見通しだ。また、マイクロソフトは今年、AIとクラウドコンピューティングに800億ドル(約12兆1700億円)の投資を計画している。アマゾンも今後の10年間でAIに1000億ドル(約15兆2100億円)を投じる予定で、バージニア州北部のデータセンターが集中する地域だけで350億ドル(約5兆3200億円)を費やす可能性がある。ジェフ・ベゾスはまた、次世代型の原子力テクノロジーに多額の投資を行っている。
ブルームバーグによると、データセンターへの主要投資家の一角を占めるブラックストーンは、米国のこの部門に今後5年で1兆ドル(約151兆円)余りが投じられると予測している。
そんな中、注目すべきトレンドと言えるのが、エネルギー大手のシェブロンがガスタービン技術に強みを持つGEベルノバと提携し、4ギガワットのデータセンター向け電力システムを開発していることだ。シェブロンやエクソンなどの石油メジャーは、巨大な製油所で電力を生成するノウハウをすでに持っており、彼らが主導してデータセンターを天然ガス田の近くに構築することで、AI開発企業が公益事業会社やパイプライン事業者が直面する許認可の煩雑な手続きを回避できるよう支援することが可能だ。
「公益事業会社の対応は遅いが、パイプラインやガス生産者は一刻も早くこの市場に食い込みたがっている」とクラウスは述べている。