自己没入状態の視点、すなわち現在の自分の気持ちに深くのめり込み、一人称で物事を考える視点から自分の感情を分析すると、くどくどと考えすぎてしまい、感情に囚われがちになる。
対照的に、自己と距離を置いた内省、つまり現在の気持ちをより客観的に、外の視点(二人称や三人称の視点)から受け止めて状況を考えた場合、物事を大局的に捉えることが可能になり、より適応しやすい感情処理ができて、よりよい感情的結果につながる。
この研究結果は、分身を作り出し、それによってより効果的な感情処理と行動を可能にするという方法に直結する。課題をより客観的に見つめ、精神的により高い耐性をもって物事に対応できるようになる。この心理的な切り替えにより、不安を揺るがぬ障壁とみなすのではなく、一時的な支障として捉え直すことができ、行動を起こしやすくなる。
2. 感情のコントロールと集中力を高める
成功するためには、プレッシャーに負けず、冷静沈着を保つことが求められる。重要な会議、大事な試験、難しい決断など、今後を左右する状況においては、恐怖、不安、フラストレーションといった感情が判断力を鈍らせ、パフォーマンスの低下につながるおそれがある。別人格になりきったり、三人称で自己と対話したりすることで、感情のコントロールがしやすくなり、明晰な判断力や集中力を妨げる内心の雑音を減らせる。
学術誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された研究論文によれば、一人称ではなく三人称(自分の名前)で自己と対話すると、脳が感情的な経験を処理する方法が変わり、感情をコントロールしやすくなるという。
脳の認知制御中枢を活性化させるには努力が必要だが、代わりに第三者視点で自分に語りかけるだけで、感情の表現方法が変わり、余計な精神的負担なく感情を管理しやすくなるというのだ。
このテクニックはシンプルかつ効果的なため、特に感情的な困難に直面したときに内向きに考え込んでしまいがちな人にとっては、日常生活において役立つかもしれない。
冷静沈着な分身、たとえば自信に満ちたリーダーやバットマンのようなヒーローになりきって、その目を通して自分を見つめれば、それが心理的な緩衝材となり、激しい感情の動きから自分自身を切り離すことができる。これにより、気持ちに振り回されることなく目の前のタスクに集中し、より明確な意思決定が下せるようになり、プレッシャーのかかる状況でも良いパフォーマンスを発揮できる。