「多岐にわたる」の意味とは?
一つの事柄が幅広い要素を含む様子
「多岐にわたる」という言葉は、一つのテーマや領域において、さまざまな側面や要素が含まれている状況を指します。「多岐」の「岐」は、道が分かれることを意味し、「多岐」と組み合わさることで“方向性や種類が多方面にわたる”というニュアンスが強調されます。つまり、一つの案件に対して異なる角度から分析できたり、複数の要素が重層的に関わっていたりする状態を表すときに使われるのが「多岐にわたる」です。
日常会話でも「内容が多岐にわたるので、まとめるのに時間がかかる」などのフレーズを耳にすることがあります。ビジネスシーンでは、特にプロジェクトや会議で扱うテーマが複雑になるほど、「多岐にわたる」という表現が登場しやすくなります。単に「いろいろある」という曖昧さよりも、よりフォーマルかつ的確な印象を与える言葉といえるでしょう。
ビジネスシーンでの使い方
プロジェクトの範囲を説明するとき
プロジェクトや業務内容が幅広い要素を含む場合、「今回の案件は多岐にわたる分野が絡んでいます」と伝えることで、その業務に関係する範囲の大きさを強調できます。例えば、新規事業の立ち上げで商品の企画開発だけでなく、マーケティングや調達、人材育成など、複数の要素が同時に進行するようなときに役立つ表現です。
この一言があるだけで、「一見すると単純に見える課題でも、実はいくつもの要素が関わっている」という印象を受け手に与えやすくなります。特に経営層や社外のクライアントに対して説明する際には、業務の複雑性や全体像を簡潔にまとめる有効な手段となるでしょう。
レポートや資料での概要説明
会議資料や提案書で業務領域の広さを示すときにも「多岐にわたる」は効果的です。例えば、期末に行う事業報告書で、「当事業部は多岐にわたる活動を展開し、売上拡大や新規顧客獲得につなげています」と記載すれば、部署がどんな活動をどれだけ幅広くこなしているのかを端的にアピールできます。さらに、そのあとに具体例やデータを加えることで、ただ広いだけでなく、しっかり実績も伴っている印象を与えることが可能です。
ただし、「多岐にわたる」と記述するだけでは抽象度が高くなり、読む側が詳細をイメージしづらいかもしれません。そこで、「今期は製造業向けに新ツールを提供しつつ、教育分野へのサービス拡充にも注力するなど、多岐にわたる施策を打ち出しました」というように、概要と具体例をセットで示すと、より説得力のあるレポートになります。
注意点と誤用を防ぐコツ
「多岐にわたる」だけでは内容が伝わりきらない場合も
「多岐にわたる」は便利な表現ですが、これ一語だけで詳細を全て補えるわけではありません。あまりに頻繁に使いすぎると、読んだ相手が「具体的に何が多岐にわたるのか?」と疑問を抱く可能性があります。特にビジネスの場では、説明不足は信頼を損なう一因にもなりかねません。
そのため、資料や会議などで「多岐にわたる」と述べる際は、後ろに続く文章で範囲や要素、具体的な案件などをリストアップすると親切です。箇条書きや図解などを活用すると、情報の広がりを一目で理解してもらいやすくなります。
類似表現と混同しないように注意
「多岐にわたる」は「いろんな面を含む」「複数の領域に及ぶ」といった意味合いで使われますが、混同しやすい表現として「多方面に及ぶ」や「多種多様な」が挙げられます。これらは似たニュアンスを持ちつつも、文脈によって微妙に適した言葉が異なることも。
例えば、「多種多様」は対象のバリエーションが豊富である点を強調する表現です。一方「多方面に及ぶ」は取り組みや影響範囲が複数の分野に広がっている様子を示すのに適しています。内容に合った表現を選ぶことで、文章全体の説得力を高めることが可能です。
類義語・言い換え表現
「幅広い」「多様な」
「多岐にわたる」とほぼ同じ意味で使えるフレーズとして、「幅広い」「多様な」が挙げられます。どちらも、扱う内容や業務領域などが単一に留まらず、複数の側面を持っている状況を示す点で共通しています。
- 幅広い:対象範囲が物理的・概念的に大きく広がっている
- 多様な:種類やジャンルが豊富で、それぞれに差異がある
例えば、企画書で「新規顧客の獲得には幅広いアプローチを検討する必要がある」と書く場合、「多岐にわたるアプローチを検討する必要がある」と言い換えても、ほとんど違和感がありません。状況によって微妙にニュアンスが変わるので、伝えたい趣旨に合った単語を選びましょう。
「多方面に及ぶ」「多角的な」
他にも「多方面に及ぶ」「多角的な」など、ややフォーマルかつ専門的ニュアンスを持つ言葉もあります。
- 多方面に及ぶ:複数の分野や領域に広がっている状況
- 多角的な:複数の角度から検討・分析する姿勢や手法
特にレポートや会議資料のタイトルなどで「多方面に及ぶ課題」「多角的な分析」というフレーズを使うと、対象が単一ではなく複数の要素を内包していることを強調しやすいでしょう。「多角的な」は分析や評価の場面でよく用いられ、「一点からだけ見るのではなく、あらゆる角度から考察しています」という前向きな姿勢を示すのに有用です。
例文で見る「多岐にわたる」
ビジネスメールや報告書で使える例文
以下に、ビジネスシーンで「多岐にわたる」を使用した例文をいくつか挙げます。目的や相手の立場に合わせて、文脈をカスタマイズしながら活用してみてください。
- 「今期の事業計画は多岐にわたる取り組みを含むため、各部署間の連携が鍵となります。」
- 「先日のミーティングでは、多岐にわたるアイデアが出ましたので、いくつかに絞って再度検討いたしましょう。」
- 「ご提示いただいた資料は、多岐にわたるデータが含まれているため、精査に少し時間をいただきたく存じます。」
これらの文例では、「多岐にわたる」という言葉を入れるだけで、業務やテーマが幅広く含蓄のある内容であると伝わります。読み手に「これは一筋縄ではいかない案件なんだな」と感じてもらいたいときに、有効なフレーズとなるでしょう。
会議やプレゼンテーションでの口頭表現
会議やプレゼンの場面では、口頭でも「多岐にわたる」を使うと効果的です。ただし、口頭で言う場合は声のトーンや全体の流れとのバランスを意識しましょう。以下に口頭表現をイメージした例を紹介します。
- 「今回のプロジェクトは多岐にわたる検討事項があり、各チームのスケジュール調整が不可欠です。」
- 「新商品の開発戦略は多岐にわたるため、市場調査やユーザーリサーチ、コスト見積もりなどを並行して進める必要があります。」
- 「多岐にわたるデータをもとに分析しておりますが、途中段階の結果を取り急ぎご報告します。」
「多岐にわたる」という言葉が入ると「単に一要素だけではない」というニュアンスが浮き彫りになります。これに合わせて、具体的なデータや数字を併せて伝えると、聞き手がより具体的なイメージを得やすくなるでしょう。
まとめ
「多岐にわたる」は、一つのテーマや案件がいくつもの側面を持ち、さまざまな要素が関係していることを示す便利な表現です。ビジネスの現場では、プロジェクトの複雑性や業務範囲の広がりを一言で示せるため、会議資料やメールなど多様な場面で重宝されます。
ただし、頻繁に使いすぎたり、内容を具体的に補足しなかったりすると、聞き手や読み手には漠然とした印象しか与えられないリスクもあります。後続の文章や図表を用いて具体的な要素を示すことで、「多岐にわたる」の曖昧さをカバーしながら、説得力ある説明につなげられるでしょう。
また、類義語として「幅広い」「多様な」「多方面に及ぶ」などが挙げられ、それぞれ微妙に強調するポイントが異なります。使い分けを意識することで、文章全体の表現力が高まり、読み手や聞き手に効果的にメッセージを届けることができます。ぜひ「多岐にわたる」を含むこれらの表現を使いこなし、より精度の高いコミュニケーションを実現してみてください。



