マスクは、米国政府が敵視する中国共産党の指導者たちと親密な関係を築いており、テスラは、他のメーカーには義務づけられている現地企業との合弁要件を免除され、単独で工場を所有・運営することを許された。また、昨年はテスラの販売が各国で低迷する中で、成長を遂げた唯一の市場が中国だった。
この状況は、マスクが今後も中国政府と友好的な関係を維持しなければならないことを意味する。そのため、仮にトランプ大統領の政策が中国の利益と対立した場合、マスクは中国から圧力を受ける可能性がある。新政権での役職でマスクと対立した後に、DOGEを離れた投資家のビベック・ラマスワミは、2023年のポッドキャスト番組で「習近平からの電話が来たら、マスクはサーカスの猿のように飛び跳ねて喜ぶ」と語っていた。
マスクは、米国の政府関係者に攻撃的な態度を取る一方で、中国の指導者に対しては、X(旧ツイッター)上で非常に好意的なコメントをしている。彼が中国のリーダーに取り入ろうとする姿勢は、2015年に中国を訪問してテスラの工場の建設を提案した時にさかのぼる。
マスクは、上海のギガファクトリーの建設許可を得る際に、中国の国有銀行から少なくとも14億ドル(約2100億円)の融資を受け、その当時上海を統括していた現在の中国政府のナンバーツーの李強首相と緊密な関係を築いていた。両者の関係は、今もなお続いている。
中国で優遇されるテスラ
中国国営の新華社通信は先月、トランプの就任式の前日に、中国の韓正(ハン・ジョン)国家副主席がワシントンでマスクと会談し、テスラや他の米国企業に対し「両国の経済・貿易関係のさらなる強化に向けて、新たな貢献をすることを促した」と報じていた。マスクはこれに対し「テスラはまさにそれを実行する準備ができている」と応じたとされる。アップルなどの米国企業も中国と深い関係を持つが、テスラは別格だ。同社は、合弁事業を義務づけられたトヨタやGMとは異なり、上海工場を完全に単独所有することを許されている。テスラはまた、中国の安価な労働力や部品、サプライチェーンを利用して、上海ギガファクトリーを「金のなる木」に育て上げた。