ガバナンス、国民の信頼、政策への影響
一連の展開において大きく損なわれるのは、国民の信頼である。政府職員や一般市民は、連邦機関に個人情報の安全を委ねている。個人情報が、偽情報や極右の陰謀論を好む寡頭体制の支配者によって管理された実験的なハッキング組織のなすがままになっている可能性があるとわかれば、不安は高まり、政府の中核機関への不信感が広がる。連邦議会では、すでに一部議員が調査を行う意向を示している。一方、たとえ法的な限界を試すことになっても時代遅れの連邦機関を抑制するための大胆な取り組みを称賛する声もある。この対立は、従来のチェック・アンド・バランスが型破りなデジタル戦術を用いることに抵抗のない政権に対して機能するかという、より広範な問題を浮き彫りにしている。
「効率性」「セキュリティ」「憲法の権威」の危険な衝突
DOGEの事例は、テクノロジーとガバナンス、憲法の権威が衝突する瞬間を象徴している。政府の非効率性に対しては慢性的な不満があり、新しい大胆なアプローチは少々なら健全な対策といえなくもない。他方、一方的な行政措置(大統領令)により議会を迂回して、選挙で選ばれていない人物に権力を集中させ、国民の血税と個人情報への無制限のアクセスを認めるのは、将来の政権にとって危険な前例となりかねない。
すでに、HIPAAやFISMAといったデータ保護の義務から基本的な憲法原理まで、さまざまな違反が行われている可能性についてワシントン中から警鐘を鳴らす声が上がっている。たとえ改革という名目であっても、連邦政府のネットワークに侵入したり法的規制を無視したりする行為は、絶妙なバランスで構築された米国の統治に疑問を投げかけるものだ。
DOGEの一件は、デジタル時代においては憲法のガードレールを回避し、驚くほどのスピードと範囲で権力が行使される可能性があるという生々しい実例だ。のちに議会が介入したり、裁判所の審判に付される展開になったりしたとしても、そのときには取り返しのつかない影響が出てしまっている。そうなった段階で事態に対処するのは、馬が逃げた後に納屋の扉を閉めるようなものである。
(forbes.com原文)