風光明媚な北村は、オーバーツーリズムが深刻な課題となっており、宿泊者を除く観光客の入村時間が午前10時から午後5時に制限されています。早朝に散歩していると、居住者と思われる女性に険しい形相で「あっち行け」と手で払われました。観光地化に対する地元住民の反発に向き合うために、ノスタルジアは自治体や他の韓屋事業者とともに、観光税の導入や住民特典クーポンの提供といった共存策を模索しています。
一方ソウル市は、ラグジュアリーインバウンド客の誘致に力を入れており、観光・文化の包括的なプロモーションサイト「Visit Seoul」を運営し、国際的なVIPゲストをソウルに招待。ノスタルジアもこれらの取り組みに参画しています。
ホテル以上のブランドを目指して
点在する韓屋での客室サービスは、玄関や庭に段差があるなど、運営上難しい点が多くあります。そこで大通りにウェルカムセンターを設け、ゲストの要望はLINEで受けて速やかに対応しています。このような柔軟なサービスを行えるグローバルな人材の確保が難しく、日々求人をチェックしているといいます。「ホテルビジネスは24時間、365日のノンストップ営業。このような世界で働こうという若者の発掘に苦労しています」。
ビジネス拡大の手法も考えどころです。100軒ほどしかない韓屋は、競合間で争奪戦の様相を呈しています。現在ノスタルジアでは5軒が稼働していますが、所有する8軒すべての稼働が事業の損益分岐点。そのため、今後はこれまでのように買い足すのではなく、韓屋オーナーから委託を受けて運営する方針をとるといいます。「幸いノスタルジアの評判が良く、韓屋オーナーから委託運営を打診されるようになりました。投資家の関心も高まっています。ブランドアイデンティティと運営強化のためにも、投資を受け入れようと考えています」
目指すのは韓国版のアマンリゾート。その先には、単なる宿泊施設に留まらず、韓国の多様なライフスタイルのブランド化を視野に入れています。すでに「Bukchon1777」というブランドを立ち上げ、ファッションや食など北村に関連した商品展開を計画。「”I LOVE NY”のような地元愛を感じるブランドにしたい」とパク氏は語ります。
「最後に後悔しない人生を送りたい。自分の死後も、ノスタルジアを通して韓国の文化、歴史、競争力を残すことができる。この事業の推進は、私の使命だと感じています」


