長年にわたって過度の混雑と老朽化に悩まされてきたそのルーブル美術館について、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が先ごろ、待ち望まれていた改修工事を2026年から開始すると発表した。
同美術館については、長蛇の列や混み合った館内の状況に呆然としたり、いら立ったりする世界中からの来館者たちによるSNSへの投稿や、その状況に関する各国の報道が以前から関心を集めていた。
また、仏紙ル・パリジャンは大統領の発表に先立ち、ローランス・デカール館長がラシダ・ダチ文化相に宛てた「極秘」メモの内容伝えていた。流出したそのメモの中で館長は、「内部は非常に劣化が進んでおり、機械設備は時代遅れ。漏水があり、大幅な温度の変化が所蔵作品の保存状態を危険にさらしている」などと訴えたほか、「由緒あるこの施設の状態は、国際的な基準を下回っていると警告」していた。
また、フランス労働総同盟(CGT)の関係者は仏紙ル・モンドに対し、「館内では塗装が剥がれ落ちたり、室内が水浸しになったり、停電が起きたりしているほか、予算不足のためサービス提供者への支払いが遅れることもある」と明かしている。
一方、英紙ガーディアンは、「ルーブル美術館はかつての炭鉱の町、北部ランスに開設した別館や、アラブ首長国連邦(UAE)とともに同国内に建設したルーブル・アブダビなど、いくつかの新しい施設に投資してきた。だが、パリにあるこの大規模な美術館は数十年間にわたり、構造的な部分の改修を行わないままできた」と伝えている。
ルーブル美術館の「ヌーヴェル・ルネサンス」
レオナルド・ダ・ヴィンチの傑作「モナ・リザ」の前でマクロン大統領が明らかにした「ヌーヴェル・ルネサンス(新たな再生)計画」によると、6年をかけて行うこの改修工事は、美術館の内部だけでなく、周辺地域も対象となる。「モナ・リザ」が専用の展示室に移され、新たなエントランスが建設されるほか、地階展示室の増設や旧式の機械設備の交換、水漏れや温度の問題の解消に向けた工事なども行われる。また、これらに向け、2025年中に国際建築コンペティションを行う予定だという。