ビジネス

2015.08.19

アディダスVSナイキ サッカー・ユニフォーム獲得戦争の行方

Matthew Ashton - AMA/Getty Images

スポーツメーカーの巨人、アディダスがここ数年苦戦している。アメリカのスポーツウェア市場では、昨年Under Amourに抜かれて3位に後退した。投資家の圧力が強まる中、アディダスは長年経営トップに君臨してきたHebert Hainerに代わり、来年から同社を率いるCEOを探している。アディダスの株価は、昨年40%も下落。一方で、ライバルのナイキの株価は24%上昇している。そんな中、売上高195億ドル(約2.兆4,000億円)のアディダスは重大な発表を行った。

アディダスは8月1日、マンチェスター・ユナイテッドの新しいホームユニフォームを初披露した。アディダスは昨夏、マンチェスター・ユナイテッドと10年で総額12億8,000万ドル(約1,580億円)のスポンサー契約を締結。チームユニフォーム(キット)の製造と販売を行うことが決まっている。

マンチェスター・ユナイテッドは、Facebook、Twitter、Instagramの公式アカウントで「#BeTheDifference」のハッシュタグを付けた投稿を合計38回行い、新しいキットのリリースをフォロアーに伝えた。イギリスのスポーツ市場調査会社Repucomによると、これらの投稿がアディダスにもたらした広告価値は、3日間で230万ドル(約2億9,000万円)に達したという。

シーズンが進むにつれ、更に何百万ドルものソーシャルメディア価値がアディダスにもたらされるだろう。Repucomによると、この夏にローンチされるサッカーチームの新ユニフォームの中で、マンチェスター・ユナイテッドが最も大きなインパクトをもたらす見通しだ。

マンチェスター・ユナイテッドには、SNSのフォロワー数が7,600万人いるが、アディダスに価値をもたらしているのは、この巨大なファン基盤だけでなない。Repucomは、他に二つの点を挙げている。それは、フォロアーのエンゲージメントの高さと、コミュニティに対するチームの働きかけの強さだ。先日、ドバイのアディダスショップが、誤って発表前の新しいサードユニフォームの販売を開始し、その全容が明らかになってしまった。

ソーシャル価値が大きいことは素晴らしいが、マンチェスター・ユナイテッドは商品を販売し、マネタイズする必要がある。アディダスは今後10年に及ぶパートナーシップで、25億ドル(約3,100億円)の売上を見込んでいる。マンチェスター・ユナイテッドは世界のスポーツチームの中で5番目に価値が高く、チームの評価額は31億ドル(約3,800億円)にも上る。

66年の歴史を誇るアディダスは、ブランドを活性化するためにこれまでサッカーに巨額の投資を行ってきた。アディダスとマンチェスター・ユナイテッドの契約金額は、これまでの記録だったArsenalとPuma、Chelseaとアディダスのそれぞれ年間5,000万ドル(約62億円)を打ち破り、史上最高額となった。

マンチェスター・ユナイテッドは過去10年間ナイキとキット契約を結んでいたが、アディダスがナイキよりも高い金額を提示し、新しい契約を勝ち取った。契約金額の12億8,000万ドル(約1,580億円)は最低保証であり、実際にマンチェスター・ユナイテッドが受け取る金額は、これを大きく上回る可能性が高い。アディダスは四月にBayern Munichに対して約10億ドル(約1,240億円)を支払い、キット契約を2030年まで10年間延長することで合意している。これでアディダスは5大キット契約のうち、四つを獲得したことになる。

翻訳編集=上田裕資

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事