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経済

2025.02.04 12:30

米国とカナダの報復関税合戦、中国と豪州の貿易戦争の再来か

米ミシガン州デトロイトとカナダ・オンタリオ州ウィンザーを結ぶアンバサダーブリッジ。2021年3月15日撮影(Getty Images)

米ミシガン州デトロイトとカナダ・オンタリオ州ウィンザーを結ぶアンバサダーブリッジ。2021年3月15日撮影(Getty Images)

2020年から昨年にかけて中国がオーストラリアとの摩擦で経験したように、貿易戦争に勝者はいない。米国が隣国のカナダやメキシコに仕掛けた関税を巡る報復合戦でも、両陣営は同じことを実感する可能性が高い。

中豪の貿易戦争は、新型コロナウイルスの世界的な流行を引き起こしたと非難された中国の反発で勃発した。これは現在、米国とカナダ・メキシコとの間で問題となっている貿易摩擦の先例とも言える。現在の貿易摩擦が中豪の事例と異なるのは、関係する国々が長年にわたる友好国であることだ。

中豪の貿易摩擦では、長年にわたってくすぶり続けていた両国の対立と規模の不均衡が背景にあり、この争いは「ダビデとゴリアテ」(訳注:少年ダビデが巨人ゴリアテに立ち向かうという旧約聖書の逸話。この文脈では、人口規模がはるかに小さいオーストラリアをダビデに、大きな中国をゴリアテに例えている)の様相を呈し、中国はオーストラリアを脅して容易に屈服させられるだろうともくろんでいた。

だが、中国の思惑通りにはいかなかった。同国はオーストラリアの輸出品の中に、自国の産業に欠かせない品目が2点あることに気づいたからだ。さらに、オーストラリアの輸出業者は、中国の輸入禁止リストにある他のすべての製品の輸出先となる新たな市場を瞬く間に開拓した。

中国は自国の鉄鋼業に不可欠な鉄鉱石と石炭の代替供給国を見つけることができなかった。鉄鉱石に関しては、オーストラリアとブラジルの2カ国が世界の海上輸送による供給を独占していたからだ。一方、オーストラリア産の石炭、特に製鉄用の石炭は品質の高さに定評がある。

カナダがオーストラリアの事例から学べること

中国が禁輸措置や高関税を課したオーストラリアの輸出品は、他国がこぞって買い占めた。メキシコは家畜飼料向けとビール製造用にオーストラリア産の大麦を輸入。エジプトとサウジアラビアはオーストラリア産の小麦を大量に購入し、日本と香港は中国が拒否したワインとロブスターを輸入した。

滑稽なことに、中豪の貿易戦争中に香港が輸入したオーストラリア産のワインやロブスターのほとんどは中国本土に流れ込んだ。石炭も第三国から中国に再出荷される製品となった。パキスタンは突如としてオーストラリア産石炭の主要輸入国となり、オーストラリアから輸入した石炭を中国に転売したのだ。

カナダの経済規模は米国よりはるかに小さいが、カナダの輸出業者は、オーストラリア企業が中国との貿易関係の断絶にどう対処し、どのように新たな顧客を開拓していったのかを見直している可能性は十分にある。

米国に輸出されていたカナダ産の原油は国際市場に再投入できるが、多少の不便を伴うかもしれない。とはいえ、オーストラリアは中国による石炭禁輸の試みを回避する方法を見出した。カナダと米国の国境をまたいで製造されている自動車に関しては、組み立て工程が統合されているため、両国にとって難しい問題となるだろう。

新たに導入される関税によって短期的な痛手を負うものの、カナダの企業は自国と深いつながりのある欧州や英国のほか、カナダ産原油を吸い上げる中国を筆頭に、新たな市場が次々と開かれていくことに気づくだろう。時が経てば、中豪の貿易摩擦と同じように、カナダも米国も、すべての人にとって余計な費用がかかっただけで、この争いから得られるものは何もなかったことを認識するだろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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