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2025.02.18 15:30

未来を知りたい私たちの「思考の盲点」とは

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結局私たちは、自分にとってちょうど良い具合に“未来っぽいもの”を未来としてとらえ、そうではないものを関係のない話としてとらえる、とても度数の強い偏見の眼鏡をかけ続けて生きてきている。

フィリップ・E・テトロックらが10万人を超える大規模な調査結果をもとに記した『超予測力 ─不確実な時代の先を読む10カ条─』には、実際に先の未来を正確に予測できた人の特徴として、「決めつけないこと」「先入観にとらわれないこと」「さまざまな情報から多角的にとらえること」「自分のバイアスを認識していること」などをあげている。

未来は、未来っぽいかどうかではなく、実際に起こりつつあるかどうかによって捉える必要がある。P.F.ドラッカーは自身が社会の動向を読み解く際に「通念に反することで、すでに起こっている変化は何か」に注目すると説明している。それが未来を知る一歩目になる。

未来の話をするとき、多くの人は技術の発展や新しい社会制度の誕生など、未来っぽいものに目を向けがちだ。それらは、確かに将来起こりうることかもしれない。一方で、その陰にひっそりと見過ごされている、未来っぽくはないがすでに起こっている未来が身を潜めている。未来というのは、未来っぽいものもそうではないものも、同時に起こりやってくる。とすると、見過ごしている未来の存在が、私たちにとってより重要なのかもしれない。

「esse-sense」という研究者メディアで150人を超える研究者の取材をしていて思うのは、最前線の研究者の知見や取り組みにこそ、未来っぽい未来と未来っぽくない未来が同時に詰まっているということだ。例えば狩猟採集民の暮らしのなかにある世界観が、私たちがとりえる社会の姿をすでにある未来の可能性として示してくれたりする。

人にとって未来っぽくないものを未来の可能性として語ると、多くの場合は拒絶されたり無視されたり馬鹿にされたりする。そして、実際にその未来がやってきたときには、人はそんな話を昔聞いたことはすっかり忘れて、未来に向けて当然重要なものとしてそれを語る。「未来っぽくない未来をどうやってとらえていくか」。この思考の盲点に気づくことが、未来を知り、生き延びていくために必要な最も大切なことなのではないだろうか。


西村勇哉◎大阪大学大学院で人間科学の修士取得。2011年NPO法人ミラツク設立。イノベーションプラットフォームの構築と、大手企業の新領域事業創出支援、研究開発プロジェクト立ち上げ、未来構想・未来戦略の設計支援、未来潮流の探索などに取り組む。

文=西村勇哉 構成=谷本有香

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