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サイエンス

2025.02.05 12:30

世界最大、被覆面積2万平方メートルの樹冠をもつ樹「ティマンマ・マリマヌ」

南インドのアーンドラ・プラデーシュ州にある「ティマンマ・マリマヌ」(Getty Images)

ベンガルボダイジュの伝説と生態

ティマンマ・マリマヌの名前の由来であるティマンマは、この地に生きた女性の名前だ。彼女は、無私の自己犠牲によって崇敬の対象となった(なお、「マリ」はバンヤンツリー、「マヌ」は幹を意味する)。
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伝説によれば、15世紀に生きていたティマンマは、夫の火葬台に身を投じるサティー(寡婦殉死)を行い、火葬台を支えた柱の1つから、この樹が芽生えたとされる。

こうした歴史的・文化的位置づけから、ティマンマ・マリマヌには、毎年多くの巡礼者が訪れる。この樹は、子どものいない夫婦に子宝を授ける一方で、葉を折り取った者には呪いをかけると信じられている。

一般にベンガルボダイジュは、ヒンドゥー教神話やインド文化において神聖視されている。
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生態学的観点から見ると、ベンガルボダイジュは、生態系のキーストーン(中枢)種であり、コウモリ、鳥、昆虫といった無数の種に、生息場所と食料を与えている。広く張った根は土壌侵食を防ぎ、生態系の安定化に不可欠な役割を果たしている。

しかし、こうした自然環境への恩恵とは裏腹に、侵略的外来種としての側面も知られているほか、根の成長によって、周辺の構造物に被害が及ぶこともある。

ベンガルボダイジュが「生きた棺」である理由

ほとんどの植物は、地中から上に向かって育つ。だがベンガルボダイジュは、空から下に向かって育つ。絞め殺し植物(Strangler Fig:他の植物や岩などの基質に巻きついて絞め殺すように成長する、イチジク属や一部のつる植物などの俗称)の一種として、成長の過程で宿主の樹を「絞め殺す」のだ。

ベンガルボダイジュの種子がほかの樹の枝に引っかかると、そこで発芽した若木は、巻きひげを垂らして、林床に届かせる。この巻きひげはやがて地中に根付き、地上部分は厚く硬く成長する。

そしてベンガルボダイジュは、宿主の棺となる。ベンガルボダイジュは、もとの樹に巻き付いて枝を伸ばし、日光を横取りする。同時に、根を地中に張りめぐらせて、養分と水も奪ってしまう。樹が成長するにつれ、枝から無数の気根が垂れ下がり、果てしなく広がる樹冠を支える。
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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