テクノロジー

2025.02.09 13:30

10億ドルを調達、光量子コンピュータを目指す4人の天才の履歴書

T. Schneider / Shutterstock.com

20年ごろには、世界初の実用量子コンピュータをつくるための場所を探し始めた。オーストラリアは最先端企業の誘致に熱心で、何年も交渉した結果、24年4月、連邦政府とクイーンズランド州政府が9億4000万豪ドルのディールに合意した。オブライエンは、サイクオンタムのコンピュータは長くもつであろうことから、安定した政府、高学歴の人員、繁栄している経済を確保できる長期的なパートナーシップが優先事項だったと話す。
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同社は、24年末か25年初頭にはブリスベン空港近くにある敷地で建設に着工し、2棟の建物が建つ予定だ。うち1棟は極低温貯蔵工場となり、ヘリウムガスを冷却して液化し、隣にある建物に送る。そのもう1棟の建物は、キャビネットとラックが並ぶ、データセンターのようなつくりとなる。どこまでも理論家のルドルフは、早く量子コンピュータを完成させ、使い始めたいと待ちきれない思いでいる。順調に動き出せば、このコンピュータには短期間に膨大な需要が生まれるだろう。

「このテクノロジーのいいところは、人によって使い道がさまざまだという点です。ただ、量子コンピュータの優れた点のひとつには、量子力学の問題を解決するのに長けているということもあります」

そう話すルドルフは、自分はおそらく割り込んで先に使うことを許される立場にあると考えている。
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「私が社内で営業部門の人間にそう言うと必ず、『マシンの使用料を払えるだけの資金力はありますよね』と言われるんですけどね」(ルドルフ)

だが、それが実際に問題になることは、しばらくないだろう。世界初の誤り耐性のある汎用量子コンピュータを27年までに完成できたとしても、自分のニーズは満たせないだろうとルドルフは言う。

「私がやりたいことには、途方もない計算速度の量子コンピュータが必要なのです。それは現在開発中のものの10倍以上の性能で、実現までにどれだけ時間がかかるのか。私にもわかりません」


サイクオンタム◎2015年、カリフォルニア州パロアルトで設立された量子コンピュータの研究、開発を行う企業。ジェレミー・オブライエンはじめ、4人の科学者が創業メンバー。量子ビットとしてフォトンを使用した量子コンピュータを2027年までに完成させることを目指す。24年4月、豪連邦政府などから9億4000万豪ドルの提供を受けることが決定。

ジェレミー・オブライエン◎サイクオンタムの創業者兼CEO(最高経営責任者)。1995年、オーストラリアの西オーストラリア大学の学部生だったときに量子コンピュータの分野に足を踏み入れた。ニューサウスウェールズ大学で博士課程を終え、クイーンズランド大学でポスドクとして研究に従事。英国ブリストル大学に移籍後、サイクオンタムを立ち上げた。

テリー・ルドルフ◎サイクオンタムの共同創業者兼CA(最高設計責任者)。アフリカ・マラウイで子ども時代を過ごし、オーストラリアに移住。物理学と数学を専攻後、カナダのトロント大学での量子工学の博士課程を修める。ウィーン大学、ベル研究所を経て、英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンへ。光量子コンピュータの研究に着手した。

マーク・トンプソン◎サイクオンタムの共同創業者兼CT(最高技術責任者)。英国のケンブリッジ大学で電気工学の博士号、シェフィールド大学で物理学の修士号を取得。材料工学のコーニングやスタートアップのブックハムテクノロジー、東芝でシリコンフォトニクスに関する事業の立ち上げなどに携わった。

ピート・シャドボルト◎
サイクオンタムの共同創業者兼CSO(最高科学責任者)。2014年に英国ブリストル大学でオブライエンのもと、実験的光量子コンピューティングで博士号を取得。その後、インペリアル・カレッジ・ロンドンのルドルフのもとでポスドクとして量子理論を研究した。14年、英国工学・物理化学研究会議(EPSRC)のライジングスター賞を受賞。

文=マーク・ウィテカー 翻訳=フォーブス ジャパン編集部 編集=森 裕子

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