そんな双葉町で今年1月、宿泊施設「Hotel Quest -浜のでいりぐち-」の試験運用が実施された。
手掛けたのは龍崎翔子が代表取締役CEOを務めるホテルプロデュースカンパニー水星。龍崎は、11月に同地で実施されたアイデアワークショップ「Hamadori Drawing Camp」(経済産業省「福島浜通り映像・芸術文化プロジェクト」の一環)で企画を提案したところ採用され、約2カ月で実現した。

Hotel Quest の特徴は、「異日常」を体験できること。宿泊客は、浜通り地域の人から出された多様な「Quest(クエスト)」からひとつを選び、お手伝い体験をする。クエストは、「薬局をDIYして、ライブができるコミュニティスペースをつくりたい!」「文化財の古民家での餅つき大会を、一緒に楽しみたい!」など、地域住民とともに取り組むものが主流だ。体験を通して地域への理解を深め、街の復興に貢献することもできる仕組みとなっている。
「ホープツーリズムで双葉町の伝承館を訪れる方は年間10万人以上いるそうですが、そのほとんどはいわきなどの他エリアで宿泊していると知り、このアンバランスさに突破口があるのではと感じました」(龍崎)

ワークショップで与えられた課題は「遊休不動産を活用して地域課題を解決するアイデア」。観光客が地域活動に参画する(お手伝いする)というステイエクスペリエンスを設計することで、復興に向けて手が足りない住民と、この地域に貢献したいと考えている人とのマッチングを実施した。龍崎はこれを「アーティスト・イン・レジデンスならぬ、ワーカーズ・イン・レジデンス」と表現する。