「出生地主義」見直しの大統領令
さらにこのような話もある。米国は日本などと異なり、米国で生まれた子どもには両親の国籍にかかわらず米国籍を与える「出生地主義」をとっている。これに対するのが日本の「血統主義」で、こちらは生まれた場所に関係なく両親の国籍を継ぐという考え方だ。
米国では昨今、この「出生地主義」を利用して中国人などが「米国籍取得ツアー」と称して大挙して米国を訪れて出産する現象が問題となっているが、この制度を見直すという大統領令に、トランプ大統領は署名した。
ただ、これに関しては20以上の州が「憲法違反」として差し止めを求める訴訟を起こしており、ワシントン州の連邦裁判所は、1月23日に一時的な差し止めを命じた。これに対しトランプ大統領は上訴する意向を示しているが、憲法違反をめぐり今後も論争は続いていくと見られる。
そして、この動向に慌てている日本人も少なくない。
日本人にとってもこの出生地主義は魅力で、子どもに米国籍を与えるために米国で出産する人という人もいるのである。外国人が出産する場合は保険が適用されず、400万〜500万円の出産費用がかかるのが一般的なのだが、それをものともしない富裕層が出産地として選ぶ人気の滞在先がハワイなのである。
米国の州では最も日本から近いし、日本語が通じる医師もいる。日本食も容易に手に入る利便性も魅力ということだろう。子どもが米国籍を取得すれば、日本でインターナショナルスクールやアメリカンスクールに入学しやすくなる、子どもが21歳になり米国籍を選択すれば(20歳までは二重国籍ということになる)呼び寄せ制度で両親にグリーンカード(永住権)を与えることができる、というメリットがある。

流行のきざしの「親子留学」にも影響?
さらに昨今、ハワイ移住の新しい形として注目されているのが「親子留学」や「親子移住」。孟母三遷ではないが、子どもに英語力をつけさせるべく、父親は日本でせっせと働き、母親と子どもだけハワイに移住して現地の学校に通おうという移住の形だ。
そんな親子移住の場合も、トランプ政権下で留学ビザの却下やE2ビザの審査長期化などがあれば、大きな逆風となる。親子留学の母親に向けて、より通学時間の短いプログラムを打ち出す語学学校が出始めるなど、新たなムーブメントになりつつあったのだが、トランプ政権の今後のビザ政策の行方に注目するしかない。
子どもをハワイの現地校に通わせて、滞在中に母親は下の子どもを現地で出産という計画をするファミリーもいるから、そんな人にとっては出生地主義を制限する大統領令も大きな課題だ。
トランプ大統領の任期は4年。ビジネスのハワイ進出をもくろむ経営者のなかには、この間はおとなしくして逆風が止むのを待とうという人もいる。ただ、どうしてもこの時期にハワイ移住を実現したいという人は、忙しいトランプ大統領が日本人や日本企業の滞在ビザにまで目が向かないうちに、急いでビザ申請をスタートしたほうが良さそうだ。