新時代に切り込むスタートアップ
このように大きく複雑に絡み合った課題をビジネスで解決していくには、システムソリューションを提供したり、いろいろなレイヤーでアプローチしていく必要がある。「スタートアップであれば、最初はポイントソリューションで考えていくことも大事。一方で、そこから入ることで、どのようにシステム全体を変えるソリューションにつながるのかという視点をもちながら、段階的に事業と課題解決の幅を広げていく必要があります」
参考になるのが、2021年のFoundXのFounders Program にも採択されているOcta Roboticsのビジネス。同社は、ロボットがビルなどの建物内を自由に移動できるようになるシステム「LCI」を提供している。
労働力不足の課題解決に向けてサービスロボットの普及に取り組む同社だが、ロボットの導入障壁となっていたのが、縦移動だということに目をつけた。ロボットは足が車輪になっていて階段を上れないため、各フロアに1台ずつ置かなければならなかった。そこで、ビルのエレベーターや自動ドアと連携させて自由な動きを可能にし、必要台数を減らして導入ハードルを下げた。
ソリューション自体は非常にニッチだが、将来新時代のサステナビリティ的な事業の広がりとして、ロボットの活用を前提としたビルのトータルマネジメントの展開や、国際標準化などを活用した海外展開も視野に入る。
「自分たちの事業を安全保障のレンズで見ると何が見えるのか、社会保障や労働力不足のレンズではどうか、といったように見方を変えることで、その事業を次に何につなげられるのかが見えてきます。逆に、そういったマクロな視点で物事を考えなければ、スタートアップは大きくなれないのではないでしょうか。我々も、そうしたマクロな課題に対して解決策を提案するスタートアップを増やしていけるように支援していきたいと思っています」
うまだ・たかあき◎日本マイクロソフトを経て、2016年から東京大学。本郷テックガレージの立ち上げと運営を行い、19年からFoundXディレクターとしてスタートアップの支援とアントレプレナーシップ教育に従事する。スタートアップ向けのスライド、ブログなどで情報提供を行っている。