むろん、この作者といえば、この男、「南方熊楠と同じ」という自己紹介でおなじみの主人公こと南方(みなかた)も一緒に、である。
しかし、南方とその仲間たちが、めくるめく大冒険を繰り広げた彼らの高校時代も、いまは昔。母校を卒業してから半年以上が経ち、彼らが屯ろしていたジャズ喫茶も閉店し、すでにない。生きる屍レベルの偏差値と、殺しても死にそうにないしぶとさの両方から「ゾンビーズ」と呼ばれた面々も、散り散りになってしまっている。
当の南方はというと、なんと!、かつて彼とその仲間たちが武勇伝を繰り広げた舞台のひとつ永正大学に、法学部1年生として通っている。しかしながら、大学図書館での午睡を日課とする毎日からは、法律を学ぼうという熱意がいまひとつ伝わってこない。
主人公の行動様式にも変化が
そんな11月のある日、学食で不意に見知らぬ男が話しかけてくるところから物語は始まる。いかにも真面目そうなその男子学生は、結城と名乗った。窮地に立たされた人に力を貸すという高校時代の噂を聞き、南方に相談事があるという。不意を突かれたこともあり、一旦は無愛想にやりすごすが、後日教室で待ち伏せすると、行方が知れなくなった親友を探してほしい、という頼みを引き受けることにする。
手始めに訪ねたのは、消えた男が所属していた合コンサークルを牛耳る志田という男だったが、そこで予期せぬ事態に遭遇する。友達の仇を討つと息巻き、特殊警棒を振りかざす女子高生の2人組と鉢合わせしてしまったのだ。
一触即発の危機はなんとか免れたが、志田には無謀に振る舞う取り巻き達がおり、結城の親友もその1人だったとわかる。
在日韓国人であることをものともしない主人公の高校生が、苦難を乗り越え、逞しく成長していく青春小説『GO』(2000年)で直木賞を受賞した金城一紀だが、作家としてのルーツは、そこから遡ること2年前に発表した「レヴォリューション NO.3」という中編小説にあったと思しい。
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