DeepSeekへの疑惑が残ったとしても影響は残り続ける
もしもDeepSeekの「蒸留による低コスト実現」がOpenAIの不正利用に基づくものだと立証されれば、DeepSeekのコスト面での優位性が大きく揺らぐのは確実である。短時間かつ低予算で学習するために、世界トップクラスの教師を無断で雇ったことになる。「数万台のGPUを数年動かし続けた結果」生まれた巨大プロジェクトの成果を、わずかな期間と予算で得られたという魅力は薄れる。
しかし、蒸留自体はAI研究で重要なテーマであり、DeepSeekが今後どうなるかに関わらず「低コスト学習の方向性が見定まった」として一気に研究開発が進むインパクトが業界全体を刺激し続けるだろう。
万が一DeepSeekが失脚しても、競合他社や新興企業が独自に低コスト学習を突き詰める流れは止まらないと予想される。
また疑惑の目が向けられているDeepSeekの技術公開が進めば、既存のハイテク企業は学習効率化や新しい蒸留手法の研究に拍車をかける。AIモデルの拡大と多様化が促進され、従来以上にAI投資は増加する。
それでもなお、エヌビディア株が過剰な評価を得ているとする声は大きいが、技術的観点からは「エヌビディアの大幅凋落」ではなく、「低コストAI開発に向けた世界的動きの加速」を印象付ける結果が、その後の流れになっている。
AI業界の今後を見据えると、むしろさらなる市場拡大と技術革新を促す「加速剤」となる可能性が高い。高性能AIの低コスト化がもたらす新たな競争と連携の構図を、われわれはこれから目撃することになるだろう。