また、AI開発のコストが下がれば、より多くの企業・組織が参入できるため、むしろ「市場全体の規模が拡大」する。今後、推論やファインチューニング、AIエージェントの応用などがさらに盛り上がるだろう。
そもそも米中間の技術覇権争いは今に始まったことではない。DeepSeekが登場したからといって、その覇権争いが一気に傾くはずはなく、「政治や規制リスクで簡単には米国製GPUを全面的に活用できない」という中国側のハンデもある。
一時的にパニック売りに走った投資家が、割安になったエヌビディア株を買い直す動きへと転じたのは自明だったといえよう。
蒸留不正疑惑、OpenAIのデータは盗まれたのか?
一方、こうした株式市場の混乱とは別に、DeepSeekには疑いの目が向けられている。DeepSeekの成功の要因として挙げられる蒸留は、本来「オープンソースの教師モデル」を活用して行うのが一般的だ。しかし、OpenAIのAIモデルが出力するデータをAPI経由で不正に取得し、それを自社モデルの蒸留元として使ったのではないかという目が向けられている。
OpenAIは、利用規約の中で「モデル出力を再学習の素材として競合するAI開発を行う行為(蒸留)は認めない」という方針を明確にしており、事実ならDeepSeekは重大な規約違反・知的財産の盗用として告発されるだろう。
この告発の元となったのは米ブルームバーグ通信の報道だ。2024年秋頃にマイクロソフトが不審なAPI利用を検知し、OpenAIとともに調査を進めているという。その背景には「DeepSeekや関連グループが、大量のデータをOpen AIから引き出していた痕跡がある」というものだ。