このDeepSeekの台頭が世界に知られるようになったのは、ご存知の通り2025年1月27日に米国株市場で起きたエヌビディア株の17%近い下落だ。
これにともない、アルファベット(グーグル)やマイクロソフト、ブロードコム、英ARMホールディングスなど、AIに関連するハイテク株が軒並み急落。ナスダック総合指数全体で見ても3%下落し、27日1日だけでナスダック上場企業の時価総額が1兆ドル(約154兆4000億円)以上消失した。
エヌビディアに限って言えば、1日で5890億〜6000億ドル(約91兆〜92兆7000億円)の時価総額が吹き飛び「米国株史上最大級の一日下落額」というショッキングな見出しが一人歩きした時期あった。
この暴落は「中国のAIが米国を追い抜くのではないか」という不安を投資家が一気に抱いたことで起こったものと言える。大幅に開発コストが安くなるのであれば、今後AIの開発の中心は中国に奪われてしまうかもしれない。
「ショック」から一夜明け
このニュースが出たとき、すぐにビジネス系のアナリストや記者から質問のメールが届いた。それに対して筆者が答えたのは、すぐに戻るから、今すぐにエヌビディアの株を買うべき、というものだ。そもそも、なぜDeepSeekの登場でこれほどエヌビディアが売られたのか。
DeepSeekの発表したモデルが「高価なGPUを必ずしも必要としない」とする主張は、これまでの「大規模AI=エヌビディア製GPUが不可欠」という構造を揺るがしかねない。また、2022年末のChatGPT公開以来、米企業(OpenAIやグーグル、メタなど)が世界のAI市場をリードし、その優位性が米国経済の底堅さを支える一因になっていた。
そこに中国発のDeepSeekが登場したことで、「技術覇権の中心が揺らぐ」との見方が広がったことも投資家心理を冷やした理由だろう。