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AI

2025.01.30 17:00

蒸留疑惑と株価急落、DeepSeek旋風が映し出すAI市場の行方

わずか560万ドル(約8.6億円)程度の開発費でモデルを完成させ、短期間で市場投入にまでこぎ着けたと主張する中国製AI「DeepSeek」(Jaap Arriens/NurPhoto via Getty Images)

このプロセス自体は以前から研究されていたが、DeepSeekは演算精度の最適化(具体的には演算に用いるビット数削減)を行うことでGPUやメモリ使用量を一気に削減できた。開発コストの大幅な低減や株価への影響といったドラスティックな側面ばかりがニュースに捉えられているが、こうした技術的洗練により「高性能AI=膨大なコスト」という図式を変える大きなきっかけになると注目されたわけだ。

このDeepSeekの台頭が世界に知られるようになったのは、ご存知の通り2025年1月27日に米国株市場で起きたエヌビディア株の17%近い下落だ。

これにともない、アルファベット(グーグル)やマイクロソフト、ブロードコム、英ARMホールディングスなど、AIに関連するハイテク株が軒並み急落。ナスダック総合指数全体で見ても3%下落し、27日1日だけでナスダック上場企業の時価総額が1兆ドル(約154兆4000億円)以上消失した。

エヌビディアに限って言えば、1日で5890億〜6000億ドル(約91兆〜92兆7000億円)の時価総額が吹き飛び「米国株史上最大級の一日下落額」というショッキングな見出しが一人歩きした時期あった。

この暴落は「中国のAIが米国を追い抜くのではないか」という不安を投資家が一気に抱いたことで起こったものと言える。大幅に開発コストが安くなるのであれば、今後AIの開発の中心は中国に奪われてしまうかもしれない。

「ショック」から一夜明け

このニュースが出たとき、すぐにビジネス系のアナリストや記者から質問のメールが届いた。それに対して筆者が答えたのは、すぐに戻るから、今すぐにエヌビディアの株を買うべき、というものだ。

そもそも、なぜDeepSeekの登場でこれほどエヌビディアが売られたのか。

DeepSeekの発表したモデルが「高価なGPUを必ずしも必要としない」とする主張は、これまでの「大規模AI=エヌビディア製GPUが不可欠」という構造を揺るがしかねない。また、2022年末のChatGPT公開以来、米企業(OpenAIやグーグル、メタなど)が世界のAI市場をリードし、その優位性が米国経済の底堅さを支える一因になっていた。

そこに中国発のDeepSeekが登場したことで、「技術覇権の中心が揺らぐ」との見方が広がったことも投資家心理を冷やした理由だろう。
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編集=安井克至

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