さらに、興味深いのは、大統領就任式での副大統領のJD・ヴァンス氏が、解像度は低いがトランプ氏のコピーかのように見えたこと。彼はトランプ氏のシグニチャーであった「真っ赤なタイ」を着用していた。また、スーツの上着の前を全開にする着方を真似し、大統領就任式という国家を挙げての重要な場で、しかも初のそのような場で、恥じらいを感じさるどころか自信を持って存在していると見えた時点で、それが確信に変わったのだ。
つまり、トランプ氏自身は新たなメッセージを発信しつつ、共和党、否、「トランプ流」の象徴である赤のタイと不躾で型にハマらない姿勢を示す上着の前全開スタイルをヴァンス氏に継承させた(ヴァンスが倣った)可能性がある。人は、強い人物の真似をすることで、自分も同じ力を持ったと勘違いすることがある。それは集団を率いる為のファン心理の活用であり、刷り込みとも言える。人の中にしっかり刻み定着させる「象徴」にまで仕上げた赤のタイとそれが襟元から剣先まで丸っと見える上着前開けっぱなしスタイルは、従順に繰り返す存在にやってもらえば良いということだろう。見事なブランディングとマネジメントのビジネス思考だ。
「融和の幻想」を拒絶するタイ
このように、トランプ氏の装い、特にタイには明確な政治的意図が込められていたと考えられる。遠目には「共和党と民主党の統一」を象徴する紫に見せつつも、実際には赤と青が分離しているというデザインは、多くの「単純で善良なアメリカ人達」をにわかに、そして勝手に喜ばせ期待させながら、「そんなこと俺は一言も伝えていない」という冷酷さを感じて仕方がない。「融和だと受け取ってしまうのは、そう見えるあなたが、融和を期待しているからだ」という現実を突きつけるものである。
2025年のトランプ政権が、この「タイの暗示」をどう体現していくのか。今後の展開を注視する必要がある。今回ばかりは、筆者の読みが完全に間違っていたと言える日が来ることを、心から願いつつ——。


