トランプ氏といえば、長年にわたり真っ赤なタイが象徴的であった。しかし、この日彼が選んだのは、遠目には深い紫に見えるが、実際には「濃紺の地に赤の織り模様」というタイであった。この選択は、政治的メッセージの象徴として意図されたものではないだろうか。
本稿では、トランプ氏の装い全体を分析し、特にタイに秘められた意味について読み解いていく。
アメリカのブランドを着ていない?
この日トランプ氏が着用したスーツは、深い濃紺で、肩に厚めのパッドが施されたスクエアなシルエットが特徴。このシルエットは、彼の体型をV字型に強調し、威厳と力強さを視覚的に印象付けるものであった。
ここで疑問が浮かぶ。トランプ氏は「アメリカ・ファースト」をスローガンに掲げながら、なぜアメリカブランドのスーツを選ばなかったのか。これまでの大統領就任式では、ジョー・バイデン氏がラルフ・ローレンを選んだように、アメリカ製品を身にまとうことで国内産業への支持を示すのが慣例であった。
メラニア夫人はニューヨークのデザイナーによるアメリカブランドを着用し、それを分かりやすく公開していたが、一方トランプ氏はそれに関して、何も示していない。彼にはそういったこだわりは意味がなく、あくまで「自分にとって最高の選択」=ブリオーニ(と思われる)を貫いたのだろう。この点からも、彼の「自分がブランド」であり「アメリカ・ファーストは、厳密には“トランプ・ファースト”である」という考え方が読み取れる。