彼はその後、三洋電機と契約を結ぶことに成功したが、元の勤務先であるパナソニックやソニーの方がさらに良いと考えていた。「しかし、彼らは私たちにセルを供給することを拒否した。私たちが『危険すぎる存在』だったからだ」とケルティは語る。
彼によると、パナソニックの社長は当時のテスラのマーティン・エバーハードCEOに直接メールを送り、「お宅の会社には供給したくない」と伝えてきたという。また、その当時のケルティの上司だったJB・ストラウベルも、彼に諦めるよう指示した。しかし、それでもケルティは諦めず、パナソニックの大阪本社まで出かけて、最終的に会社を説得して契約を結ぶことに成功したという。
この取引は、テスラをその後の成功へと導く上で重要なステップの1つだった。パナソニックはテスラの主要セルサプライヤーとなっただけでなく、2010年のIPO時にテスラの株式140万株を3000万ドル(約46億3000万円)で取得した(同社はこの持ち分のすべてを2021年までに36億ドル[約5560億円]で売却した)。また、パナソニックはネバダ州にあるテスラ初のギガファクトリーに協力し、ニューヨーク州バッファローにあるテスラの工場で一時期ソーラーパネルも製造していた。
ケルティは今、GMのバッテリーの研究開発チームや社内の製造チームと連携して、セルの試作品の開発を進めている。彼は、リチウムイオンセルに匹敵するエネルギー密度と、中国のCATLやBYDが得意とする安価で耐久性の高いリン酸鉄リチウムセルの低コスト性を兼ね備えたバッテリーを、GMが近い将来開発できると確信している。
「私たちはその中間に位置する化学組成を採用するつもりだ。優れたEVのバッテリーが、必ずしも超高エネルギー密度である必要はない。480キロ以上の航続距離があれば、顧客にとって十分であることがわかってきた」とケルティは語る。
(forbes.com 原文)