
武田:現代にはなくなりつつある考えですよね。資本主義経済が発展していくほど富は集約されていくため、若者がすべてをひっくり返すようなイメージを持てなくなっていることも一因かもしれません。
マークス:日本は士農工商の名残なのか、「商」と「工」では工の方がステータスが高く、文化資本が残っている部分がありますね。マスターがコーヒー豆から淹れ方にまでこだわる町の喫茶店はその好例と言えます。儲かっているからと言って、多店舗展開をはじめて、コーヒー豆の品質を徐々に低下させて利益を出していくようなアメリカ的な考え方はそこまで浸透していないはずです。
武田:これからの時代において、どうすれば文化資本は生まれていくと思いますか。
マークス:文化はエコシステムです。まず、小さな集団にしか理解されないようなものが生まれ、それが評論家から評価されることで、多くの人に知られていくことで文化資本になっていきます。そのエコシステムにおいて、アーティストは画期的なものをつくり、評論家はそれらを批評したり、革新性を説明しなければいけません。
武田:日本は批評が生まれにくい土壌と言えそうです。
マークス:日本ではファッション雑誌が「○○系」と名付けて普及していくことがよくありますが、名前を付けることも大事な批評のひとつです。そうして普及し、真似する人が増え、徐々に社会に浸透する。そして、文化に変化が起きるというプロセスです。
武田:小さいコミュニティをつくることも重要でしょうか。
マークス:そうですね。サブカルチャーの多くは小さいコミュニティから始まったものが多く、今や誰もが知るストリートファッションブランドのSupreme(シュプリーム)も、90年代当初は知る人ぞ知るブランドでした。ただ、インターネットによりそうしたブランドは生まれづらくなっています。良さそうな動きも、インターネットで容易に発見され、すぐ売れ線に路線変更されたりもします。
武田:すぐにバレてしまう時代ですからね。「自分が最初に見つけた競争」のような状態で、アーティストがまだ成熟していない状態で掘り出されてしまい、本来のポテンシャルを発揮できないまま世に出され、消費されてしまっています。
マークス:アーティストにも、シチューみたいに煮る時間が必要ですね。アメリカのアイス・スパイスというラッパーは、ドリルラップというラップスタイルでアンダーグラウンドのカッコよさがありましたが、ファストフードのダンキンドーナツとコラボレーションをしたことで、その雰囲気は完全になくなりましたね。
武田:では今の時代に、いかに文化を醸成していけばいいのでしょうか。
マークス:かつての前衛的アーティストは、誰もが「お金はダサいもの」だと考えていました。そして、ニルヴァーナのように、その思想のものとで活動したアーティストのTシャツを今の若者が着ているように、その時代に生まれたものは長く価値を持っていると証明されています。というわけでまず、お金をダサくしなければいけませんね。


