エコシステム

2025.01.31 14:15

UCバークレー発人気イノベーション講座の講師から学ぶ、シリコンバレー・エコシステムの今

Sheila Fitzgerald / Shutterstock.com

吉川:Jonの専門分野の一つは「クラスター研究」ですね。シリコンバレーのエコシステムが他よりも突出していることはよく言われることですが、何が特別だと思いますか?
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Jon:米国にはシリコンバレー以外にも、テキサス州オースティン、ペンシルベニア州ピッツバーグ、カリフォルニア州サンディエゴなど、複数のテクノロジーの集積地はありますが、すべての分野で優れたテクノロジーの集積があるエコシステムはシリコンバレーだけです。オースティンはゲームや半導体、ピッツバーグはロボティクスやAI、サンディエゴはライフサイエンスや無線などのそれぞれの強みはあるものの、得意領域が限られており、シリコンバレーのように「広さ」と「深さ」を両方兼ねそろえていません。シリコンバレーでは、それぞれの分野が強く、それらが相互に作用し合う環境がさらなるイノベーションを促進する環境があります。

吉川:東京は日本国内では突出していますが、シリコンバレーとの違いはなんでしょうか?

Jon:東京は多くのアドバンテージをもっています。米国では政治はワシントンD.C.、金融はニューヨーク、エンターテインメントはロサンゼルス、テクノロジーはシリコンバレーといった形で分散していますが、東京にはそのすべてが集まっています。でも、これは有利にも不利にも働くかと思います。シリコンバレーは、政治権力が集中しているワシントンD.C.から最も離れたところに存在しているからこそ、既得権益に縛られずに、既存の枠を超えて、新しい発想で物事に取り組める環境があるのではないかと思います。東京は霞ヶ関の官僚とすぐに話ができる環境だけど、逆にそれが創造性の幅を狭めているとも言えるかもしれません。
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吉川:確かにそれは言えますね。一方で、中国は米国と似ていると言えますね。

Jon:まさにそうです。政治の中心は北京だけど、テクノロジーはそこからいちばん離れている深圳が強いですね。

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文 = 吉川絵美

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