マネージャーが去り、自律的な働き手が現れる
デニングの研究によれば、自律的なチームでは多くの場合、「何をすべきか」を決めることが、その仕事を実行することよりも難しいという。チームに不可欠なのは選択肢、そして課題を特定する能力だ。このために重要なのは、説得力のあるコミュニケーションだ。それにより、提案された行動指針にチームメンバーが参加しやすくなる。ただし、議論や会話は、新しいニューノーマルの一部だ。こうした「進化する環境」で成功を収めるため、従業員は、以下のセルフリーダーシップスキルに重点的に取り組むべきだ。
1. 決断力
あなたは意思決定が得意だろうか? 組織に階層構造があることで、あなたが許容しさえすれば、選択の必要性を減らしたり、あるいは排除したりすることさえできる。しかし、マネジメントの階層構造がなくなるということは、すべての人が決断力を求められるということだ。責任は共有するものであり、押し付けられるものではなくなる。あなたが成功するかどうかは、マネージャーによる監視ではなく、自分の認知能力にかかっている。仕事の未来には、ルール(ガードレール)を見極め、その制約内で革新する従業員が必要だ。古い規制だけに目を向けることなく、新しい可能性を見いだすことが求められる。
責任を放棄することは、これからはうまくいかない。あらゆるレベルで、当事者意識を持たなければならない。必要なのは、批判的思考、利用可能な情報の評価(これは、ChatGPTの疑わしい出力を含む)、そして、結果に対する責任だ。
自律的な働き手の時代が来ると、チームのニーズに基づき、個人に意思決定が委ねられる。プロジェクトマネジメント協会は、それについて次のように説明している。「マネージャーに主導されるチームは、外部の誰かによって定義、主導される。マネージャーがプロジェクトマネージャーを任命し、プロジェクトマネージャーがチームのボスになる。チームは、プロジェクトマネージャーの指示通りに動く」。一方、自律的なチームでは、あなたは、あなたというブランドのCEOだ。あなたがチームに与える影響に基づき、あなたの選択が、あなたの成功を決める。チームに影響を与えるには、どのような意思決定を行えばいいのだろうか?
2. コラボレーションと協力
自律的なチームで成功するには、効果的なコラボレーションが鍵となる。チームの目標を達成するには、強固な人間関係を築き、オープンなコミュニケーションを促進することが不可欠だ。では、どうすればいいのだろう? 結局のところ、コラボレーションと協力はどちらも、ビジネスの最も古いツールである「会話」を活用する。自律的なチームでは、「自分」が最も重要なわけでないことに注意してほしい。誰もマネージャーを必要とせず、マネージャーになりたいとも思わない場合、野心は二の次になる。進歩は、プロジェクトを進めることから生まれ、評価は、実績に基づいて行われる。
驚くべきことに、自律的なチームは、利己主義ではなく、無私の奉仕を重視する。重要なのはプロジェクトやタスクであり、社内政治や昇進、ポジショニングではない。
自律的なチームの成功には、コラボレーションが不可欠だ。では、自律的なチームはどこで失敗するのだろう? それは、有害な文化がある場所だ。殺伐とした文化を持つ企業は、新しい秩序の中で競争することはできない。コラボレーションと協力が見られない場合、文化を見直し、変革の準備をした方がいい。
3. 自立と自主性
プロジェクトは、スマート(SMART)な目標に従う必要がある。つまり、具体的で(specific)、測定可能で(measurable)、達成可能で(achievable)、適切で(relevant)、期限が定められた(time-boxed)目標だ。チームは、マネージャーの指示ではなく、SMARTな目標を中心に組織化されなければならない。ほかの人たちを巻き込んで共に目標を作成することが、自己統治の鍵だ。
マネージャー主導のチームでは、期待が行動を決定する。自律的なチームでは、合意が行動を促す。期待から合意への移行は、自立と自主性の練習であり、説得力のある方法でアイデアを共有できるようになるためのエクササイズだ。
筆者は、デジタル変革に取り組む企業へのコンサルティング業務を行なっているが、このとき、(外からの期待ではなく)合意の文化をつくることに重点を置いている。結局のところ、自律的なチームには、アイデアの平等主義がある(全員に貢献の機会がある。そしてそれは、ただ上司の指示を聞くこととは異なる)。
こうした、現在生まれつつある「労働力の民主化」は、各自が自分の意見やアイデアを持ち、自主性と自信を持ってそれを共有することを意味する。


