3. フェルデランス(分布域:ラテンアメリカ)
優美だが恐るべきフェルデランス(学名:Bothrops atroxおよびBothrops asper、和名では前者がカイサカ、後者がテルシオペロと呼ばれる)は、南北アメリカ大陸で突出して多くの死者を出している毒ヘビだ。中南米の森林に生息する、よく知られたこのヘビは、最大で2m以上になる。カムフラージュがうまく、生息環境に見事に溶け込んで存在する。住宅付近にも、時に高密度に生息する。
フェルデランスの毒は、ヘビ毒として最も強い部類ではないが、一度の咬傷でティースプーン2杯分にもなるその量は、複数の人間を死に至らしめるのに十分だ。
このヘビ毒は筋組織を破壊するため、局所症状は深刻だ。しばしば感染を引き起こし、切断が必要になる。治療を受けられなかった場合、咬傷患者は、心臓血管ショックや急性腎不全によって死亡することが多い。
恐るべき毒ヘビとして知られるフェルデランスだが、性質は臆病で、ヒトとの関わりを極力避けようとする。しかし、森林破壊と生息地の喪失によって、ヒトの居住地付近に追いやられており、農地周辺で見つかることもある。
フェルデランスは、アマゾンのアルト・ジュルア地域では、地元住民の伝承のなかで特別な地位を占める、恐怖と畏敬の対象だ。興味深いことに、民族生物学研究によれば、地元住民はこの種を熱帯雨林で一番の「猛毒」ヘビとは考えていない(この称号を与えられているのは、大型の毒ヘビであるブッシュマスターだ。ブッシュマスターの咬傷事例はまれだが、毒の致死性により、死に至るケースが多い)。しかしフェルデランスは、一番の猛毒ではないにしても、「地元住民が最も恐れる」毒ヘビという、同じくらい不吉な称号を獲得している。個体数が多く、咬傷事故がはるかに頻繁に発生するからだ。アルト・ジュルアの人々にとってフェルデランスは、ジャングルでの生活の暗く危険な現実となっている。
フェルデランスとの遭遇確率を下げるには、自然生息地と人間の居住地の明確な境界を維持することが有効だ。彼らの存在を意識し、なわばりを尊重することは、危険な遭遇を予防する上で大いに役に立つ。
(forbes.com 原文)


