リモートワークを支援する企業の実例
アマゾンやASDA(アズダ:英国第2のスーパーマーケット)など、世界中の企業がオフィス復帰方針を採用するなか、Spotifyの最高人事責任者であるカタリナ・バーグは反対の方向性を示し、従業員は「子ども」ではないと主張している。テクノロジー大手をはじめとする多くの企業が、対面でのコラボレーションを推進する一方で、同社の「どこでも勤務」へのこだわりは、働く場所への対照的なアプローチを浮き彫りにしている。
オフィス復帰の義務化やその価値について、疑問を呈している専門家もいる。Practice Aptitude Tests(プラクティス・アプティテュード・テスツ)の創業者ガイ・ソーントンは、従業員のオフィス復帰を選択する企業が増えている理由と、その選択が企業に対して、利益より害をもたらす可能性について、以下のように述べている。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、多くの企業がリモートワークへの移行を余儀なくされ、全世界でハイブリッドワークモデルが導入された。企業が新常態に適応するにつれて、完全なリモートワークと、従来のオフィス勤務の妥協案としてハイブリッドモデルが浮上した」
ソーントンはその上で、ハイブリッドワークモデルは職場の生産性を48.8%向上させ、さらに、事業コストの削減と定着率の上昇につながっているという研究結果を引用した。そして、雇用主はなぜ、パンデミック前の働き方に戻そうとしているのか、と問い掛ける。
「従業員が常に監視されているように感じると、雇用主との信頼関係が損なわれる可能性がある」とソーントンは主張する。「信頼の欠如は、エンゲージメントやモチベーション、全体的な士気の低下につながる。皮肉なことだが、生産性に影響を与える可能性があるわけだ」
「また、仕事と私生活の境界線が曖昧になる可能性もある」とソーントン氏は続ける。「常に細かいところまで管理されていると、従業員は、上司を喜ばせるために目標を達成し、業務を遂行しなければならないという大きなプレッシャーを感じる可能性がある。従業員の行動を細かく監視することに重点が置かれると、従業員は、自分自身と会社の成功より、監視の基準を満たすことに気をとられる『コンプライアンス偏重の文化』につながりかねない」
このようなやり方では、従業員は、自分自身を機械の歯車のように感じることになる、とソーントンは確信している。「労働条件における変化は、プラスの効果よりもマイナスの効果の方が大きい可能性がある。非友好的な環境になればなるほど、従業員の離職率は高まる傾向にある。ある調査では、マイクロマネジメントを経験したことがある人の69%が、転職を考えるきっかけになったと回答している」
オフィス復帰は1つのトレンドになっているが、アウル・ラボによる2024年版リポート『ハイブリッドワークの現状』は、皆がオフィスに戻っていること自体を否定している。アウル・ラボの調査では、2023年から2024年のあいだに、フルタイムのオフィス勤務は6%減少し、ハイブリッドワークやリモートワークが増加したという結果が出ている。
(forbes.com 原文)