この症状に悩む人たちに多大な影響を及ぼすインポスター症候群は、挑戦への障害、あるいは挑戦を避けるための言い訳とみなされることがある。その場合、その人は仕事に対する姿勢に疑問を持たれることになる。
ただ、心理的な混乱を引き起こすこのインポスター症候群は、珍しいものではない。属する業界や担う役割に関わりなく、多くの人たちの間に広がっていることが、これまでの研究から明らかになっている。
ある調査によれば、ビジネスリーダーの78%が、仕事に関してこの症候群の症状に悩んでいるという。また、「ハーバード・ビジネス・レビュー」は、女性エグゼクティブの75%がキャリアのいずれかの時点において、症状を経験していると報告している。さらに、世界中の知識労働者の62%近くが、日常的に症状に悩まされているという。
こうした統計が明らかにするのは、この症候群には勤続年数も経験も関係がないということだ。新入社員から経験豊富な幹部まで、成功に伴う場合が多い根強い自己不信は、その人があげた成果や組織内での成長に、悪影響を与えている。
業績への影響
インポスター症候群は、個人の業績に深刻かつ多面的な影響を及ぼす。課題となるのは主に、次のようなことだ。・自信の低下:自らの能力を過小評価することが増え、意思決定を尻込みしたり、リーダーシップを十分に発揮できなくなったりする
・先延ばし、失敗への恐怖:力不足だと見抜かれることに常に恐怖感を持っており、仕事を円滑に進めたり、大胆な手段を講じたりすることができなくなる。イノベーションや生産性が妨げられる
・成長の機会からの逃避:新たな挑戦やストレッチアサインメントを敬遠する。個人としても仕事の上でも、成長が妨げられる
・成績不振:潜在能力が高い従業員が成果をあげていない状況に甘んじることになり、組織内の眠った才能が活かされない状態が続く