まず注目したいのが愛知県のスタートアップエコシステムだ。国内最大のスタートアップ支援拠点として2024年秋に開業したSTATION Ai。名古屋市の鶴舞公園に隣接する、地上7階・延床面積約2万3600平方メートルの県の公共施設で、一際目立つのが壁面アートだ。障害のある作家とライセンス契約を結び、商業展開をするヘラルボニー(岩手県)が、同社史上最多の契約作家47人による152作品を納入した。アートで起業家たちの発想を刺激する。

上記の写真は、滋賀県の福祉施設「やまなみ工房」の大路裕也が、名古屋駅やリニア中央新幹線など7つのテーマを盛り込み、独自の視点で全長40mに及ぶ地域の絵巻物のように仕上げた作品だ。施設全体を実証実験場として活用できるようにロボットフレンドリー環境が整備され、スロープが施設内の各フロアをつなぐ。
へラルボニーはフランスの世界的なスタートアップ支援プログラム「LVMHInnovation Award 2024」で受賞したのを機に、パリにある欧州最大級のスタートアップ支援施設STATION Fに入居し、24年7月現地法人を立ち上げ、世界進出を果たした。実は、愛知県のSTATION Aiは、仏STATION Fをモデルにしており、開業前から相互連携をしているのも縁深い。へラルボニーは20年に名古屋に期間限定で初出展したのを機に、この地域での契約作家を広げており、STATION Aiの会員になった。
Co-CEOの松田文登は「これまでは東京にヒト・モノ・カネが一極集中していましたが、STATION Aiは地域からスタートアップのうねりをつくるホットな場所」と期待する。また、そんな場が広がることを願う。「私たちもアイデンティティを大切に新しい文化をつくっていくため岩手に本社を置いています。経済合理性だけでなく、温度感や熱がなければ社会は変革していかないと考えています」。