2025年1月25日に「3960億年に一度」の「惑星直列」が起こる、という話題をSNSで目にした人もいるのではないだろうか。だが、SNSは当てにならない。 実際には何が起こるのか、そして、なぜ待ち構えたり身構えたりする必要がないのかを解説しよう。
今月は4つの惑星が肉眼ですぐ見つかる。2月末には、短期間だが見える惑星が5つになる。これは異例なことでも、特に珍しい現象でもない。もちろん、一部ネット上で騒がれているような奇妙な並び方でもない。たしかに壮観な眺めではあるが、天体観測や天文学の観点からみて2025年随一のすばらしい光景だとはいえないだろう。
俗に「惑星パレード」と呼ばれる現象の真実と、1月と2月末~3月に最もよく見える時間帯についてまとめた。
「惑星パレード」とは
夜空に複数の惑星が見えている状態を指してアマチュア天文家が使う一般用語が「惑星パレード」だ。ただ、この言葉を大きく取り扱った記事では残念ながら、肉眼では見えない天王星や海王星を数に含めていることが多い。今年に入って「惑星パレード」が取りざたされているのはなぜかといえば、日没後の空で木星が明るさを保ち続ける一方で、金星と火星が最も明るく輝く時期を迎えているからだ。土星もまだ夜空に見えていて、水星もたびたび仲間入りするため、一晩に4つか5つの惑星を肉眼で観測できるチャンスが訪れている。
惑星は「直列」しているわけではない
太陽系の惑星は常に決まった配置で並んでいる。太陽の周りを惑星がひしめき合って飛び交っているわけではない。太陽系は平べったい形状をしていて、惑星はほぼ円軌道を描いて太陽を周回している。それぞれの軌道は少しずつ離れており、太陽から遠ざかるほど周回距離は長くなる。これが太陽系の平面(黄道面)の構造である。この構造が、夜空で太陽系のすべての惑星が一列に並んで見える現象を引き起こす。惑星の通り道は、太陽が昼間に空を移動する経路(黄道)とほぼ重なるため、見つけやすい。黄道の英語名は「ecliptic(エクリプティック)」というが、これは月が空を移動する経路(白道)が黄道とほぼ同じで、ときどき黄道を横切るときに太陽を隠す「食(eclipse)」が起こることに由来している。
夜空に見える惑星の数は、惑星が太陽周回軌道上のどこに位置しているか、具体的には地球との位置関係によって変わってくる。惑星の軌道が太陽に近いと、太陽と一緒に昼間ずっと上空に存在しているのに、太陽がまぶしすぎて姿を見ることができない、ということが起こる。これは、地球よりも内側の軌道を回る内惑星である水星と金星に典型的に当てはまる。一方、太陽から遠い軌道を周回する惑星は、夜空に見えやすい。