USスチールの株価下落は、中国や欧州など主要市場における経済成長の鈍化などにより、世界の鉄鋼業界が需要難に直面していることに起因している。さらに、収益が好調である一方で、USスチールはコストの高騰に苦しんでおり、その営業利益率は低位に推移している。同社の営業利益率と純利益率は多くの競合企業を下回っており、投資家にとっての魅力は低下している。
日本製鉄によるUSスチール買収の試み
日本製鉄がUSスチールを買収しようとした試みは、国家安全保障上の懸念から2024年末に当時のバイデン大統領によって阻止された。この150億ドル(約2兆3500億円)規模の取引は、対米外国投資委員会、労働組合グループ、政治指導者からの反対に直面した。懸念の中心は、国内の鉄鋼生産能力が失われる可能性であり、特にUSスチールが国家安全保障とサプライチェーンにおいて重要な役割を担っていることを考慮したものであった。また、日本製鉄が国内生産よりも輸入を優先し、米国の雇用や施設を危険にさらすことも懸念された。
日本製鉄はこうした懸念に対処するため、生産水準の保証や監督措置などいくつかの譲歩案を提示していたが、それも不十分と判断された。バイデン大統領の決定は、産業政策と国内製造業の保護に重点を置く政権の方針と一致したからだ。両社はその後、政治的干渉と適切な審査プロセスの不履行を主張し、決定を不服として訴訟を起こしている。これらの訴訟の結果はまだ不透明である。
過去4年間におけるUSスチール株の上昇は一貫しているとは言い難く、その年間リターンはS&P500よりもかなり不安定である。USスチール株の年間リターンは、2021年は42%、2022年は6%、2023年は96%、2024年はマイナス30%だった。