ポルマン:人類は長い時間をかけて進化してきたが、指数関数的な思考は苦手だ。気候変動は指数関数的問題だ。気温上昇が、ネットゼロの目標値である1.5℃以下にとどまるか2℃以下になるかでは、大きな差が出る。すべてが猛スピードで変化している。
例えば、人工知能(AI)だ。(2022年11月30日公開の)ChatGPTの週間アクティブユーザーは23年に1億人を超えたが、今や3億人超だ。デジタルトランスフォーメーション(DX)は、諸分野でイノベーションや変化の原動力になっている。
「変動が激しく、不確実、複雑かつ不明瞭(VUCA)」な世界では、現状に満足したり変化の手を緩めたりする暇はない。競争的なリーダーシップではなく、「協力的なリーダーシップ」が重要だ。
──「ネットポジティブ2.0」とは?
ポルマン:ネットポジティブ 2.0 企業は全ステークホルダーのために、地球や社会の修復や再活性化、再生に励む。気候変動や健康、人権、デジタル格差などは相互に関連している重要な問題だ。企業は、業界内外で協力し、政府とも連携して、適切な枠組みや政策、インセンティブを整備すべきだ。
ネットポジティブ企業の課題は6つ。まず、「もっと幅広い影響に対して責任を負う」こと。次に「消費と成長に抗う」ことだ。そして、GDPなど、「成功の尺度や構造を考え直す」こと。4つ目が「社会契約を改善する──生活の重視」だ。5つ目は「資本主義にブレーキをかけ、金融を見直す」こと。6つ目が、「社会の2本柱である民主主義と科学を守る」ことだ。企業は、私利私欲のためのロビー活動だけでなく、万人が豊かになるような政策を推進すべきだ。ネットポジティブ企業は多くの人材やサプライヤーを味方に、さらなるチャンスを手にできる。
──「ネットポジティブな世界」の未来は?
ポルマン:自著のなかで、CEOが孫に手紙を書くかたちで、自分の仕事を振り返ることが大切だと説いた(第2章)。リーダーとして、世の中のことをどれだけ気にかけているか? 誰のために働いているのか? 企業の役割は社会全体に奉仕することだ。企業には責任がある。行動するコストが、行動しないコストを下回っていることやテクノロジーの進歩、若い世代の目的意識の高まり、企業の見事な成功例を考えると、未来に期待がもてる。
今こそ、世界がともに気候変動や不平等・格差、生物多様性の破壊といった問題にまい進するときだ。今世紀最大のビジネスチャンスが待っている。背を向けるのは愚かなことだ。孤立して自国経済が低迷し、グローバルな地位を他国に奪われてしまう。米国がそれを望んでいるとは思わない。


