経営・戦略

2025.01.25 11:30

ネットポジティブ2.0、ポール・ポルマン元ユニリーバCEOが語る

ポール・ポルマン|英ユニリーバ元CEO(Getty Images)

──書籍の中で、ネットポジティブの「追い風」になる要素を挙げていますね(はじめに)。
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ポルマン:ひとつ目の追い風が、「ネットポジティブはビジネスになる」という点だ。米コンサル大手マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査結果によると、長期的な事業運営を行う企業は収益の伸びが平均で47%高い。別の調査では、ESG系ファンドが他のファンドを上回る結果を出すことがわかった。

気候変動を放置すれば、世界経済の損失は2070年までに178兆ドルに達する(注:米コンサル大手デロイト調べ)。だが、気温の上昇を抑えることで、世界経済は同年までに43兆ドル増える計算だ。「行動しないこと」のコストは高くなる一方だ。脱炭素化で先頭を走る企業の業績は伸びている。

ふたつ目の追い風が、「ネットポジティブは投資家に報いる」ことだ。投資家の大半は機関投資家だ。15〜30年スパンで高リターンを望んでいるだけでなく、「責任あるビジネスモデル」を望んでいる。
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次の追い風が、「ネットポジティブは世界に報いる」ことだ。企業は、生物多様性の回復によって、きれいな空気や水、原材料にアクセスできるようになり、確かな未来を手にできる。人々の幸福感が高まり、企業も、さらに繁栄する。

「ネットポジティブな世界」の未来

──「ネットポジティブなリーダー」がもつ、5つの重要な特徴を教えてください(第2章)。

ポルマン:変革の推進にはリーダーシップが極めて重要だ。足りないのはツールや資本でなく、果敢なリーダーシップだ。勇敢な企業は、奪うより与えることで繁栄する。真の危機は、貪欲さや利己主義、無関心な態度だ。13世紀のイランの詩人ルーミーいわく、「以前、賢かった私は世界を変えようとした。今、分別のある私は自分を変えようとしている」。あらゆる旅は自分自身から始まる。

ネットポジティブなリーダーには5つの特徴がある。まず、「目的意識、責任感、奉仕精神」だ。次に、「共感」。そして、最も大切な特性である「人一倍の勇気」。4つ目が、人に「インスピレーションを与え、道徳的リーダーシップを示す能力」。最後の特性が「変革パートナーシップの追求」だ。

コロナ禍以降、どの特性も重要度が増した。不安が渦巻く、不確実に満ちた時代には、共感やパートナーシップ、パーパスを大切にするリーダーのほうが、幅広い層の人々を鼓舞することができ、事業運営で、より大きな成功を収めることができる。

──2021年10月の原著出版から3年余りがたちます。アップデートしたいことはありますか。

ポルマン:「勇気」の重要性が増している。自社が世界に及ぼす影響に責任を負う勇気。科学に基づいて目標を立てる勇気。平坦とは限らないパートナーシップを組む勇気、困難な課題に挑む勇気だ。

5つの特徴のうち1つを選ぶとしたら、「勇気」だ。昨今、多くの米CEOが沈黙し、ナラティブや行動を変え始めた。DEIやESGが攻撃の対象になるなか、彼らには勇気が欠けている。

世界の逆境が、より顕在化するなか、この本を再び書くとしたら、「適応的リーダーシップ」に1章を割く。柔軟性や学びを奨励して複雑な課題に挑み、不確実性との共存を図るには、適応的リーダーシップがものを言う。
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インタビュー=肥田美佐子 イラストレーション=アレクサンダー・サビック

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