「テクノロジー×デザインで、人間の未来を変える学校」をミッションとした神山まるごと高専では、奨学金基金を設置し、これまでソニーグループ、ソフトバンク、富士通などの11社のスカラーシップパートナーがそれぞれ10億円ずつ拠出し参加。一般社団法人の基金制度を活用して資産運用し、奨学金を安定的に給付するスキームを行っている。この日本で初めてのスキームを通じた給付型の奨学金を活用して全校生徒の学費を実質無償化するという取り組みを行ってきた。
「今回の『宮田昇始スタートアップ基金』は、日本の起業家によるフィランソロピーでのエポックメイキングな出来事」と指摘する、神山まるごと高専理事長であり、Sansan代表取締役社長/CEOである寺田親弘(同・左)、同校校長・五十棲浩二(同・右)とともに、宮田昇始に基金設立の理由について聞いた。
「『1億円寄付してくれませんか』という話かと思ったら、10億円だったので驚きました。最初はびっくりしたんですが、死ぬ時にはそれくらい余っているかもしれないと思い、勇気を出して寄付しようかと思ったんです」と宮田昇始は笑いながらそのきっかけを話す。
寺田親弘が宮田に神山まるごと高専への寄付の話をしたのは2021年。3年前にさかのぼる。宮田は次のように振り返りながら、寄付の理由について話す。
「当時、メルカリ代表執行役CEOの山田進太郎さんから薦められて、ビル・パーキンス『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社)をオーディブルで聞いたこともあり、その影響がありました。本にはさまざまな金言があったのですが、そのひとつに『寄付は若いうちにしなさい』という話がありました。パーキンスさんは、亡くなる直前や亡くなった後の寄付に否定的で、その理由に昔からお金を持っていたのならば、早いタイミングで寄付することで、どれだけ多くの救われた人がいたのか、というような話をしていたんです。
私も死ぬ時に寄付するだろうと漠然とした思いはありましたが、『なるべく若いうちに寄付しよう』という思いに変わりました。話をいただいた3年前は、神山まるごと高専はまだ開校前。ちょっと遅くなってしまって、3期生の合格発表のタイミングになってしまいましたが、今寄付するのと、それこそ私が死ぬ頃の40期生のタイミングでは全然重みが違うなと」