経済・社会

2025.01.21 13:15

日本のフィランソロピー新潮流!「宮田昇始スタートアップ基金」設立

今回の寄付は、宮田がSmartHRの株式のセカンダリー取引によって得た売却利益をもとに実行されている。SmartHRは24年7月、シリーズEで214億円の調達を行い、そのうち既存株主による株式売却(セカンダリー)は114億円にのぼる。神山まるごと高専に寄付をした理由については次のように話す。
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「SaaSビジネスの先輩経営者として尊敬する寺田さんから提案をされ、共通する教育への問題意識や自分のお金が未来のために使われる安心感があること。そして個人的な話として、家族が同じ四国の高専出身だったことや、私自身も中高の6年間を寮で過ごしたことなど、縁を感じたことも寄付した理由です。21年時点で寄付することは決めました。その時点で、寄付に関する覚書にもサインしました。その後、冷静になると色々考えてしまうので、今思うと覚書の効果は大きかったかもしれませんね(笑)」

寺田は今回の「宮田昇始スタートアップ基金」について次のように話す。
「IPO(新規株式公開)前の起業家でもあるので、当時、節目節目で先立つものができたタイミングでお願いしますという話をしました。その後、神山にも何度も足を運んでいただきました。今回、宮田さんがご自身の名前を冠にした基金を立ち上げたことは、日本のフィランソロピーにおいてもエポックメイキングだったと思っています。なかなかこの規模の寄付について個人名を出して実行する事例が少ないですから。

宮田さんの話でもありましたが、僕らは、基金制度を活用して資産運用し、奨学金を安定的に給付するスキームです。短期間で、いただいた寄付を使い切って終わりというわけではありません。寄付をいただいたお金で基金を運用し、基金を通して永続的に学生の学びを支援し続けるという状況になります。宮田さんが生きている間はもちろん、亡くなってからも学生を支援し続けることができる」
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宮田は基金についての思いについてこう話す。
「米国をはじめとしたスタートアップ起業家は、若いうちから寄付をしています。例えば、(デザインソフトウェアの)Canvaのメラニー・パーキンスなどはその代表的な人物です。夫婦で財団を立ち上げて支援をしている。文化的な背景などは異なると思いますが、身近な人がやっていることが重要だと思うんです。例えば、身近な人が起業したから、自分も起業できるかな、と思ったりすることはあると思うんです。

確かに、個人名を出して寄付をしたら『寄付のお願いがたくさんきたら嫌だな』という気持ちも正直あります。でも、自分の名前を出していく活動も大事だと思っていて、意図的に出しています。

私たちは『スタートアップエコシステムをブーストし、日本からGoogle級の会社を生み出す』をミッションに、①ストックオプションをはじめとした株式報酬のポテンシャルを引き出すSaaS、②非上場スタートアップのストックオプションや株を換金できる取引所、③スタートアップへの投資機会を民主化するプロダクトの事業を行っています。スタートアップを通して資金を持った人たちを対象とした事業を進める中、寄付のサポートもできたらと思っています。うまく事業とも関連した形で、起業家やスタートアップ業界に寄付文化を作っていけたらと思っています」

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文=山本智之 写真=小田駿一

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