超富裕層が求める理想のヴィラ
彼らが求めるのは、執事やメイド、専属料理人が18時間サービスを提供し、3~4室以上のベッドルームや同行者用の宿泊設備を備えた、超富裕層向けの高級ヴィラだ。こうした施設には、温水プールやジャクジー、映画鑑賞室、ジム、マッサージ・ルームなどが併設され、プライベート・ジェットで空港に到着すれば、専属の運転手が高級SUVで待機し、人目に触れることなく、ヴィラに直行することが可能である。ヴィラは欧米の高級リゾート地を中心にカリブ海、タヒチ、バリ、ハワイなどに多く展開されている。例えば、ドミニカ共和国の南東部、ラ・ロマーナに所在する「カサ・デ・カンポリゾート&ヴィラズ」にはプライベートビーチはもちろん3つのゴルフ場やクレー射撃場、ポロ競技場、大型ヨットの係留可能なマリーナ、国際空港までが揃う。数億円規模のデザイナー・ヴィラが100棟以上建設されており、一部はリゾートが所有するレンタル専用だが、大半は北米、中南米と欧州のセレブや富豪が所有し、使用しない期間はヴィラを貸し出すことも可能である。

1週間で500万円超、超高級ヴィラの宿泊費用の実態
カリブ海には、こうした大型施設以外にも、風光明媚な孤島に戸数限定で建設されたヴィラも点在する。例えばフランス領セントルシア島のヴィラ「アシアナ」は5泊で基本料金72万円に各種のサービスが付加されるため、およそ150万円は必要だ。同じくフランス領サン・バルテルミー(セント・バーツ)島にあるヴィラ「インファード」の基本料金は一週間540万円である。イタリアのタスカニーや、フランスのコート・ダジュールにも、同様のヴィラが多く存在する。トスカーナの「ラ・トラヴェネツィア」は、1986年に当時の英チャールズ皇太子とダイアナ妃が宿泊したことで有名になった。一度に16人が宿泊可能で、一週間の基本料金は258万円。各種サービス料金が付加されると概ね500万円の予算と言われている。

超富裕層や国家元首級の政治家は、近隣のヴィラに同時期に滞在し、休暇だけでなく、社交やビジネス情報の共有や交換の場として活用することが多い。互いのヴィラを訪問し、パーティーや会食を重ねることで、費用が高くてもそれに見合う価値を感じて利用するのだ。
では、こうしたヴィラは日本には存在しないのだろうか━━。