順応性が高く、生きる上で現実的なアプローチを取ることで知られているにもかかわらず、X世代の平均的な貯蓄額は退職後に快適な暮らしを送るために必要とされる額にはほど遠く、老後への備えが嘆かわしいほどに不十分な状態だ。
X世代は「鍵っ子」として育ち、社会の大きな変化の目撃者として、強い自立心とワークライフバランスの価値観を培ってきた。だが、こうした特質は多くの人にとって経済的な安定にはつながっていない。
米国の平均的なX世代世帯の老後資金はわずか約15万ドル(約2300万円)で、必要とされる推定150万ドル(約2億3000万円)を大きく下回る。そのため、この世代は退職を大幅に遅らせるか、思い描いている老後の暮らしを大きく調整する必要に迫られている。
インフレの影響も
厳しい経済環境の中、X世代は老後資金を増やそうと奔走している。高インフレが続き、生活費の上昇で購買力が低下しているため、多くのX世代は家計を安定させるのに苦労している。こうした不安定な状況に加えて、かなりの数のX世代が「サンドイッチ世代」として、老いた親の面倒を見ながら子どもを養うという責任を担いつつ、自分たちの老後資金を積み立てようとしている。
こうした複数の要素による経済面でのプレッシャーを抱えていることから、X世代はかなりのストレスにさらされている。世界的な資産運用会社であるナティクシス・インベストメント・マネージャーズの2024年のレポートによると、X世代の大半(82%)は老後の生活資金の確保は主に自分でしなければならないと認識している。60%は退職を先延ばしする用意があるが、半数近く(47%)は老後の暮らしに必要な資金が貯まるまで働けないかもしれないと懸念している。