教育

2025.01.22 09:30

AIチャットボットが大学院の講義を受講しA評価、誰にも気づかれることなく

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AIや高等教育の現状に対する捉え方によっては、これを憂慮すべき事態と見るか、驚くべきことではないと感じるか、あるいはその両方かもしれない。いずれにせよ、この結果は大学側にとって看過できない問題を示唆している。
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その大きな理由の1つは、ChatGPTが作成した課題を、担当教授やプログラム責任者がまったく見抜けなかったことだ。論文の著者らは直接的には述べていないが、大学や教授がAI検出技術を用いて課題をスクリーニングしていなかった可能性が高い。

著者らは「研究期間中、特定のAI検出プラットフォームが使用されていたという開示や確認は得られなかった」としており、結果としてAI利用の有無を見極める責任が人間に委ねられていた。しかし、他の研究からも明らかなように、人間はAI生成テキストを見抜くことが非常に苦手であり、それはたとえ教授であっても同様なのだ。

言い換えれば、教室においてAIの生成物を見つけ出すことが重要であるならば(本来そうあるべきだが)、機械のほうがはるかに正確に検知できるのが現状だ。既存のAI検出技術を使わないのは、医師がX線やMRIを撮らずに診断を下すようなものであり、可能ではあっても本来は避けるべきだ。
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偽の学生としてのChatGPTの活動がまったく露見しなかった点や、AIを野放しにしていれば講義や学位の価値が下がることを踏まえ、論文の著者らは「強化された整合性のためのプロトコル」「改善された検出フレームワーク」「より洗練されたAI検出アルゴリズムの開発などの積極的な対策」を繰り返し呼びかけている。

その指摘はもっともだ。もしチャットボットが「A」を取得できるのであれば、学生が何も学ばずに同じAを得ることも容易だ。大学がそれを食い止めなければ(そして多くの大学はそうしていないのが実情である)、学生は実際にそうするだろう。実際、既にそうした不正利用が広がっていることもわかっている。
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翻訳=酒匂寛

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