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2025.01.29 15:15

トランプ大統領就任:分断の中で暴力と共にどう生きるか?│映画「シビル・ウォー」から読み解く

映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』より(c)2023 Miller Avenue Rights LLC; IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

こんな中、戦場カメラマンのリー(キルスティン・ダンスト)とロイター通信の記者ジョエル(ヴァグネル・モウラ)は、14カ月も記者会見に応じていない大統領を単独取材するべく、車の旅を決断する。同行者はリーの師であるサミー(スティーブン・ヘンダーソン)と、偶然知り合った駆け出しの若いカメラマン、ジェシー(ケイリー・スピーニー)。
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道程はサミーのアドバイスにより、寸断された道路を避けてニューヨークから一旦ピッツバーグに西進し、そこからシャーロッツビルの前線へと迂回してワシントン.D.Cに至る1400キロ。彼らが道中目にする光景、出会う出来事の中に、アメリカという大国の陥った深い混乱と荒廃が浮かび上がってくる。
(c)2023 Miller Avenue Rights LLC; IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

多くのハリウッドの娯楽作品とはやや異なり、ドラマはエンターティメント的なサービスを極力避け、比較的抑制したタッチで描かれている。また、緊迫したシーンの中にジェシーの撮った写真が随時挿入され、ドキュメンタリー的な効果を生んでいる。

分断に至った経緯が描かれない理由

だが一番特徴的なのは、国家の分裂という極めて政治的題材を扱いながら、そこに至った因果関係の説明は一切省かれているということだ。

たとえば、大統領がどのような政治を行い、どんな点で対立が激化し、どういう経緯で19の州が国家から離脱し、国内で政府軍に対抗するまでの政治的軍事的勢力が生まれたのか、そうした情報は周到に伏せられている。リベラル/保守の対立軸も見えない。そもそも、民主党が強いカリフォルニア州と共和党の地盤テキサス州が組むこと自体、現在の政治情勢からは考えられないことだ。
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つまり、誰にも何と何がどう分断されているのか、対立しているのかは見えないまま、単に深刻な分断そのもの、対立そのものだけがさまざまな場面で前面にせり出してくるのだ。そしてそのことが逆に、アメリカという国に巨大な規模で生じた内乱の混迷ぶりをリアルに伝えるものとなっている。
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文=大野左紀子

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