サイエンス

2025.07.05 18:00

夏を彩るカラフルな花火、それぞれの色を生み出す岩石と鉱物の種類

Billion Photos / Shutterstock

Billion Photos / Shutterstock

岩石や鉱物がなければ、明るく多様な色を放つ花火も存在しないだろう。

夜空を彩る大型の花火は、打ち上げられた「花火玉」が上空で爆発することで生じる。花火玉とは、爆発を生み出す火薬と、色を生み出す金属の粉末を混ぜ、殻に詰めたものだ。爆発時に、明るく燃える粒子が四方八方にまき散らされ、上空に光の筋が生まれる。

木炭に、硝石などを混ぜ合わせたものは黒色火薬と呼ばれる。これは、花火の打ち上げに使われる中では最も基本的な材料で、7世紀の中国で発明されたとされる。特に反応を起こしやすい性質を持つ鉱物であるチリ硝石は、天然に存在する硝酸ナトリウムの一種で、花火の酸化剤として用いられ、燃料の燃焼を促進する。

しかし、火薬が燃えるだけでは、淡い黄色の炎しか出ない。花火の鮮やかな色彩は、燃料である火薬から直接生まれるものではなく、意図的に火薬に加えられた金属鉱物によってもたらされる。

火薬が燃えると、摂氏1000度以上という非常な高温に達する。これにより、金属の結晶構造のなかにある原子が熱されてエネルギーを放出し、特定の波長の光が放たれる。これを、私たち人間の目が特定の色として認識する。

例えば、バリウムという元素は緑の光を放つ。バリウムは、硫酸バリウムの鉱石である重晶石(じゅうしょうせき:バライト)から採取される。天青石(てんせいせき:セレスタイン)も、この重晶石グループに属する鉱石だが、硫酸ストロンチウムを主成分としており、花火の赤い光のもととなる元素、ストロンチウムの主要な供給源となっている。

重晶石(バライト) Bjoern Wylezich / Shutterstock

緑の光を放つバリウムを含む重晶石(バライト) Bjoern Wylezich / Shutterstock.com

ストロンチウムは、地球の地殻に最も豊富に存在する元素の一つだ。しかし、商業利用が可能なレベルでストロンチウムが含まれているのは、天青石とストロンチアン石という、2種類の炭酸塩鉱物に限られている。天青石は、スカイブルーの色合いをしていることから、「空色」の意味を持つ「セレスタイン」とも呼ばれている。

天青石(セレスタイン) jennifer_crowder_artist / Shutterstock

赤い光のもととなるストロンチウムを含む天青石(セレスタイン) jennifer_crowder_artist / Shutterstock.com

また、カルシウムやナトリウム、カドミウムは、燃やすと黄色い光を発する。ラテン語で「石灰」を意味する単語から名付けられたカルシウムは、方解石(カルサイト)やドロマイトを含む鉱石の石灰石に多く含まれている成分だ。

方解石(カルサイト) KrimKate / Shutterstock

燃やすと黄色い光を発するカルシウムを方解石(カルサイト) KrimKate / Shutterstock.com

次ページ > 燃焼すると明るい白い光を発するマグネシウムやチタン、アルミニウム

翻訳=長谷 睦/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事