岩石や鉱物がなければ、明るく多様な色を放つ花火も存在しないだろう。
夜空を彩る大型の花火は、打ち上げられた「花火玉」が上空で爆発することで生じる。花火玉とは、爆発を生み出す火薬と、色を生み出す金属の粉末を混ぜ、殻に詰めたものだ。爆発時に、明るく燃える粒子が四方八方にまき散らされ、上空に光の筋が生まれる。
木炭に、硝石などを混ぜ合わせたものは黒色火薬と呼ばれる。これは、花火の打ち上げに使われる中では最も基本的な材料で、7世紀の中国で発明されたとされる。特に反応を起こしやすい性質を持つ鉱物であるチリ硝石は、天然に存在する硝酸ナトリウムの一種で、花火の酸化剤として用いられ、燃料の燃焼を促進する。
しかし、火薬が燃えるだけでは、淡い黄色の炎しか出ない。花火の鮮やかな色彩は、燃料である火薬から直接生まれるものではなく、意図的に火薬に加えられた金属鉱物によってもたらされる。
火薬が燃えると、摂氏1000度以上という非常な高温に達する。これにより、金属の結晶構造のなかにある原子が熱されてエネルギーを放出し、特定の波長の光が放たれる。これを、私たち人間の目が特定の色として認識する。
例えば、バリウムという元素は緑の光を放つ。バリウムは、硫酸バリウムの鉱石である重晶石(じゅうしょうせき:バライト)から採取される。天青石(てんせいせき:セレスタイン)も、この重晶石グループに属する鉱石だが、硫酸ストロンチウムを主成分としており、花火の赤い光のもととなる元素、ストロンチウムの主要な供給源となっている。
ストロンチウムは、地球の地殻に最も豊富に存在する元素の一つだ。しかし、商業利用が可能なレベルでストロンチウムが含まれているのは、天青石とストロンチアン石という、2種類の炭酸塩鉱物に限られている。天青石は、スカイブルーの色合いをしていることから、「空色」の意味を持つ「セレスタイン」とも呼ばれている。
また、カルシウムやナトリウム、カドミウムは、燃やすと黄色い光を発する。ラテン語で「石灰」を意味する単語から名付けられたカルシウムは、方解石(カルサイト)やドロマイトを含む鉱石の石灰石に多く含まれている成分だ。