「関税と強制送還がトランプ新政権の既定の政策手段となるのであれば、最終的には、米国のモビリティ指数は比較においてだけでなく、絶対的にも低下していくことになるでしょう。中国の(ビザの)開放度が高まる中でこうした傾向がみられれば、今後はアジアのソフトパワーが、世界的に優勢になっていくと考えられます」
中国は「さらに強く」
中国は米国とは対照的に、国民のモビリティが過去10年にわたって上昇している。「ヘンリー・パスポート・インデックス」のランキングでは、順位は2015年の94位から、2025年には60位に上昇した。同じ期間中、中国の国民がビザなしで入国できる国・地域は、プラス40となった。また、中国にビザなしで入国できる国・地域は、合わせて58となっている。過去1年に29カ国・地域にビザなしでの入国を許可した中国の「開放度」での順位は、80位に上昇している。
米国は「移住希望者が増加」
一方、他国で市民権や在留資格の取得を申請する人が最も多いのは、米国民となっている。2024年にヘンリー・アンド・パートナーズを通じて投資家ビザを申請した人のうち、最も多かったのは全体の21%を占める米国のパスポート保有者だった。ヘンリー・アンド・パートナーズのユルク・シュテフェンCEOによると、このビザの申請者数が多かった国の2~4位は、トルコ、フィリピン、インド、英国。米国人のクライアントの数は、これら4カ国の申請者の合計を上回ったという。
シュテフェンCEOはこの点に関して、次のように話している。
「前例のないボラティリティに直面する投資家や富裕層の家庭は、新たな在留許可や市民権を取得するという地政学的裁定取引(アービトラージ)を行う戦略を取り入れています。管轄区域がもたらすリスクを回避し、国による法的、経済的、政治的、社会的な状況の違いを活用し、個人的、経済的、ライフスタイル上の効果を最大限に利用するためです」